生還 /小林 信彦 (著)

図書館で借りて目を通したので感想をメモ。

 

小林さんが80代半ばで脳梗塞を発症して、そこから生還するまで、その間複数回入院もしており、その過程を記した闘病記。結果的に一部麻痺は残ったけれども文章は書けるところまでは戻ったようで、個人的にはやや安心した。

 

脳梗塞というと、TL上でも同世代の某教授が発症しているのを見たり、実際の知り合いでも40代で発症している例を見るので、まだ先の話とは片づけられない気もする。

 

例によって、というべきか*1、小林さん自身の認識したことが中心(一部お嬢様の記録が入るが、これはこれで緊迫感があった。)なので、事実関係でわからないところはあるものの、それが却って生々しい感じもする。文章がいつもの小林節ではない気がするが、状況からすれば当然のことだろう。体調の回復に応じて文章も回復している感じではあったが。

 

内容が内容なので、一度は手に取るのをためらったのだが、ある種の諦観に満ちている感があり、それほど重苦しい感はなく、淡々としていたのも却って印象的だった。そういう諦観があるからこそ現状と折り合いをつけられるのだろう。

*1:人物評伝とかで取られていた手法と共通するものがあると感じた。