肖像権時代の最新スナップ撮影術 (アサヒオリジナル) (日本語) / 朝日新聞出版 (編集)

いくつかの点で興味があったので購入してみたので感想をメモ。

 

下手の横好きでしかないが、気分的にはsnap shooterでいたいということもあり、デジカメ時代のsnap shootingについて読んでみようかと手に取った。表紙が、顔はわからないが、トーンや撮り方から明らかに森山大道さんとわかるのも、個人的には買う気にさせてくれたところでもある。

 

snap shootingの基本という意味では、大西みつぐさんの作例付きの丁寧な解説がわかりやすいし、大西さんの名取洋之助の写真の読み解きも、面白かった。森山大道ハービー山口をはじめとした、プロの写真家の作例付きでのスナップ写真についてのコメントも、写真家それぞれの立ち位置が興味深かった。個人的には森山大道さんのコメントは、ある程度氏の作品に接していれば、そうだろうなと感じたし、大西正さんの撮り方の紹介の中で、取りあえず見たものを撮ってから、再度見直して引っかかったものを選んで…というプロセスは、森山大道氏が銀塩写真時に同様のことを指摘していた(再度町の中を歩く、というような表現をしていたような…)のを思い出した。

 

個人的には、一番敬愛する桑原甲子雄さんの影響なのか、そういう問題が生じないよう、目立たないように撮るという感じでいるのだが、それとは異なるスタンスで撮られているプロの方々、特に、トラブルを恐れずに、踏み出していく山内道雄さんのスタンスは、真似できないなと感じた。

 

また、冒頭の特集での日本のスナップ写真の俯瞰図は、写真史に詳しくなくても知っているようなビッグネームがどこに位置づけられるかということを見るだけでも興味深かった。個人的に好む桑原甲子雄さん、森山大道さん、荒木経惟さんの位置づけには納得だった*1

 

弁護士的視点で見ても、肖像権や盗撮等との関係で問題が起きたときの対応法について、弁護士さんが解説されている記事や、その弁護士さんと写真家、編集者等との対談(実際のトラブル事例を抽象化して論じているのは、撮る側としては参考にしやすいのではないかと思う。ありがちな例が取り上げられていたので。)、はたまた、写真家のコメント・体験談の中でのこれらの問題に対する言及が興味深かった。言葉だけが独り歩きしている結果、これらの問題への懸念から表現行為が委縮したり、時代の情景の記録が引き継がれなくなってしまうことへの問題意識には、納得するところがあった。

 

プロの方々からは、事前に承諾を取る・とれる関係性を築く、か、そうしない場合は、概略気にしすぎていると良い写真にはならない。総じて真摯に撮っていれば何とかなる、というところなのは、まあ、納得するところ。素人にできるかというと疑問だけど。

 

*1:荒木さんの作品から見た氏の現状についての分析は、頷けるものとともに寂しいものを感じたのだが、やむを得ないのだろう。