一通り目を通したので感想をメモ。
信山社のレクチャーシリーズの一冊。法学に関心のある高校生*1相手に、泰斗というべき先生方がレクチャーをしたものおを、質疑応答もまとめたもの、というところか*2。
今回は、一橋大学で教えられたあと、国民生活センター理事長も務められた松本先生*3が、グローバリゼーションの中での消費者法と題して、明治期のいわゆる学説継受という民法典の輸入というグローバリゼーションの話から始まり、昨今の経済活動のグローバル化、デジタル化を受けての消費者法を巡る状況の全体像を解説されている。コンパクトな判型で、本文が100頁余と紙幅も多くないので、消費者法という分野の個別の詳細な話に立ち入っているわけではないが*4、昨今の状況の鳥瞰という意味では良いのではないかと感じる。著者のように様々な経験をされた方だからこそ語れる、時間的・地理的なスケールの大きな本、という印象を受けた。
個人的に印象に残ったのは次の諸点。
- ごく簡単にではあるけれども、消費者法の刑事法の側面についても言及があること。以前もっと若い世代の共著の消費者法のテキストに目を通したときには、そのあたりに触れられておらず、民法学者の限界なのかなと疑問に思っていたが、民法学者であるはずの著者がきちんとそのあたりに触れていることを考えると、そういう話ではないのだろうとも思えてくる。
- グローバル化を受けて、国境をまたぐ消費者トラブルへの解決方法についての言及もあるところ。この辺りは、著者の前記のご経験の賜物なのかもしれないが。
- 明治期に欧州から学説継受で法律を輸入した日本が、20世紀後半にベトナム等に法律を輸出する側に回っている点*5の指摘も興味深く感じた。