メーカー勤務時代に買ったものの、読まないまま非メーカーに転職したため、積読山に埋もれていたが、先般発掘されたこともあって、目を通してみたので感想をメモ。タイトルは内容に対して不適切と感じたが、書いてあることについては、有用かもしれない。
需要予測、商品開発・在庫管理・ロジスティックあたりの実務経験者がそれらの分野について書いた本というところ。生産工程*1の話はあまりないうえに、研究開発の話はなく、バックオフィスについての話もなく、バックオフィスとして挙げられているのは、総務と人事で法務や知財は出てこない。この程度のカバーの仕方でメーカーについて何をどこまで理解できるのか、という疑問を禁じ得ない*2。また、メーカーといってもB2Cまたはサプライチェーンの最下流のB2Bメーカーしか想定されていないようにも見え、こちらのようにもっと上流のB2Bメーカーしか経験していない立場からすれば、需要予測や商品開発については、そちらの見えている世界ではそうなのかもしれないが...と思うことの方が多かった*3。
また、カタカナや横文字、数式が多用され、いかにも外資系経験者*4が書きそうな、意識高く、緻密な分析と分かりやすい図解込みで論理だった*5内容の割に縦書き・三段組の頁の作りというのも、単に読みにくくなっているだけにしか見えず、理解しがたいものを感じた。もっともこの点は、タイトルも含めて、編集側の問題なのかもしれないが。
とはいうものの、前記で否定的な内容を述べたのは、主に書かれていない内容についてであって、書かれている内容については、「グローバルスタンダード」*6とやらを前提にしたものであり、少なくとも著者たちが体験した範囲では有用だったのだろうし、2021年に出た本なので今となってはやや内容が古くなっている感がある部分もあるが、それはそれで知っておくと有用かもしれないと感じた。
*1:生産管理などの話はあるが、製造の現場での活動についての話はあまり書かれていない。ついでにいうと、話はそれるが、工場の立地戦略のような話もない。
*2:法務は仕方ないかもしれないが、知財戦略抜きにメーカーの何が理解できるのか、という気がする。
*3:エンドのユーザーもエンドでの用途も見えづらい素材メーカーとかは需要予測や商品開発をとかどうするのかとか、生産機械、特に大型のそれのように個別性が強くて受注生産に近いようなものについて、統計的な需要予測が可能なのか、意味があるのか、とかそういうことが脳裏をよぎった。
*4:出羽守という単語が脳裏をよぎる。
*5:頭でっかちという批判が生産現場に近いところから来そうな気がした。実際にそういう批判が妥当なのかはにわかにわからないが。