総会シーズンの何だか(2023/6/24)

呟いたことを基に雑駁なメモ。

 

6月も下旬となると、3月決算の会社についての株主総会の最盛期ということになる。今般、某B2Cの企業の株主総会で、株主の個人が製品に関して個人的な思いを延々と述べるという話が回っていたのに接した*1。会社の意思決定の場であるはずの株主総会の場で何をやっているのか、という批判が出るのはある意味で当然もする*2

 

ただ、事前の議決権行使の促進*3やその集計で、実際の総会前に意思決定が確定する実務は既に定着しているように思うので、実質的には会社の意思決定の場としての株主総会は、既に形骸化しているという見方も可能であると思う。そうなると、少なくとも平時については*4、前記のような事態に対しても、他の株主が質問等する機会を奪わない限りは*5、総会の原理原則からは多少外れるかもしれないが、あまり目くじらを立てるまでもないのではないかという気がする。特にB2Cの企業で個人株主を増やそうとするのであれば*6、個人に自社のファンになってもらうことで、株主になり、株主であり続けてもらおうとすることが必要なので、総会がファンミーティングとかお気持ち表明の場になるのはやむを得ないのではないか。そういう意味では、総会の時に歌手のライブを併設する音楽業界の某社のような対応は、そういう方向性に振り切った対応としてはわかりやすいのではないか。

*1:ご当人を非難する意図はないので、リンクなどはしない。

*2:なお、既に指摘が出ているように、要望を述べたことが却ってマイナスに作用する可能性があるように思う。そうした要望を安易に容れて「成功体験」を与えてしまった結果、模倣する人間が続き、当の企業にとっては収拾がつかなくなる事態が想定可能なことからすれば、当然の対応となるのだろう。

*3:最近の所謂スマート行使は確かに簡便だと思う。

*4:会社の支配権の異動の問題が生じるような「有事」またはそれに準じる状態のときには、異なる見方があり得て、同じ会場で直に議論することに別の意味が出てくることもあるかもしれない。そういう時には、現経営陣の恣意的な運用がなされないようにする必要が生じることもあるかもしれないし、そうした可能性を排除しづらい所謂バーチャルオンリー総会だと、そうした恣意的な運用がなされる危険を制度的に排除しきれないのではないかと感じる。そういう意味で無制限な運用を認めるような定款変更に反対の意思を表明していた議決権行使助言会社の対応にも一定の理があるのかもしれない。

*5:今回はその点で問題があったようだが。

*6:僕自身はこれまでB2Cの会社にいたことはないので、正直なところはわからないが。