最近のなんだかー切り売りの意味について(2023/5/2)

呟いたことを基に手動twilog的なメモ。某先生のつぶやきを見て感じたことなど。

 

企業の株式の上場というのが、支配権を広範に切り売りすることであるということがどこまで理解されているのか。そうした切り売りの果てには、現状の支配権を有する者が、意に反した形で、全く知らない者に支配権を奪われる危険があること、上場とはそうしたリスクと引き換えに資金調達をするということが、企業を運営する経営層に、どこまで真剣に理解されているのか、という疑問を抱くことがある。そして、そういうことを意識させずに、上場ゴールとか言われたり、上場企業が信用されたるのも、適切なのか、疑問を禁じえない。そういう経営の不安定さがある方が信用されるのか?という疑問になるわけだが*1。もちろん支配権の切り売りをしても、価値のない企業の支配権を買うということが、広範になされることは考えにくいから、支配権の切り売りを買ってもらえるだけの価値があるというのは、それ自体一つの価値なのだろうが。また、こうしたリスクの軽減策としては、現状の株式会社の制度内でも、種類株式とかを使うことも考えられるという気がするが、種類株式がいまいち広まっていないようで(東証の態度が一因なのだろうか。そのあたりはよくわからない。)、実効性のある選択肢たり得ていないようにも見える。

 

東証が、PBR1.0倍以下の企業にその状態を改善しろという話をしているが、それが簡単にできるような話かというとそうとも限らないわけで*2、それならばむしろ、支配権の切り売りをせずに資金調達ができる方法がもっと広めるとともに*3、上場それ自体に価値があるわけではないという認識を広めれば、無理に上場する・上場を維持する会社が減るのではなかろうかという気がする*4。そうした他の道を封じておいて、短期的に実現できそうにないお題目を市場運営側が企業側に求めるのが適切なのかは疑義があると思う。

 

*1:ファイナンス視点からの議論が色々あり得るというのは認識しているつもりだが、本エントリではそれらは一旦脇においていることを付言する。

*2:だからこそ現状に至っているのではなかろうか。

*3:こういうことをいうとMBOとかいう単語が聞こえてきそうだが、仮にそういう行為をするとしても、その際にファンドが入って、そこが後からどこか想定外のところに売却してしまえば、結果として、支配権の意に反した切り売りが生じる可能性が残るので、こちらの問題意識に対応する手段としての有効性には疑義がありそうな気がする。

*4:東証として、上場をする・維持する会社から手数料等が取れる等のメリットがあるから、実は退出を促したくないという思惑が仮にあるとすれば、こうした議論は生じにくいのかもしれないが。