いろいろあるよ,いろいろね。

なんとなく,クレージーキャッツ風かな,と(謎)。

 

あえて,特定可能なことはここでは書かないが,TLに出てきた某所のブログの記事を見て,思うことをいくつか五月雨式に書いてみようかと。件のブログは,大手事務所からインハウスに転職された方が書かれたようなのだが…。

 

日本法の有資格者にとって,インハウスと事務所とどちらが良いか,という問いは,個人的には,そもそも無意味な問いではないかと,今は考えている*1つまり,どちらが良いかというのは,要するに何を重視するかで答えが変わる話で,何を良しとするか,という基準なしに考えても,意味のある答えが出るとは考えにくいと思うのである。

 

ある意味わかりやすい,ワークライフバランスについては,確かに,労働法の保護が手厚くなる確率の高いインハウスのほうが相対的に優れているのは間違いない。しかし,常にワークライフバランス最優先とは限らないだろう。特に経験値を積みたいときには,ワークライフバランス上の考慮が障害となる可能性だってある。

 

もう一つわかりやすい金銭的なものについては,入ってくる金額的には,事務所のほうが高いかもしれない。この点は比較対象のとり方次第だけど,一年目で8桁の額面収入を得ようとするなら,大手事務所に行く以外の選択肢は厳しいだろう。とはいえ,ライフワークバランスまで込で考えたうえで,時間単価を考えると,インハウスに分があるだろうし,金銭面以外の福利厚生まで考えるとさらにそうなるかもしれない。

 

経験値の積み方,という意味では,インハウスで訴訟の書面を自分で,というところは,それほど多くないように思う(いろいろ聞いた限りではゼロではない)。訴訟は外注しやすいところなので,むしろインハウスは他の分野に注力ということも多いようにお見受けする。対裁判所への書面を書くスキルの蓄積という意味では,事務所のほうが優れていることが多いのだろうが,その分,それ以外のところがインハウスの注力のしどころということになるのだろう。

 

ぱっと思いつくところで,かつ,わかりやすいところをあげてみたつもりだが,これらからしても,両者の違いは,大きく,自分が何を求めるか,でどちらを取るかは自ずから異なってくるということは明らかなのではないかと思う。

 

また,企業と弁護士事務所というのも,それぞれ一括りにするのは危険で,それぞれの規模,立ち位置などによっていろいろなものが異なっている。企業といってもインハウスが大勢居て,下手な弁護士事務所よりは遥かに書籍や資料,データへのアクセス手段を持っているところもある(商社の法務部とかがそうだろう)し,弁護士事務所でも,全部が全部,あらゆる分野について資料が整っているわけでもない。特定分野に業務を絞っている事務所であれば,当該分野以外の資料はないに等しいということもある*2。資料が手元にあることそれ自体に価値があるのではないし,使うかどうかわからない資料をいちいち手元においておくコスト(入手費用,置く場所など)を考えれば,そういう選択をしたとしてもそれほどおかしなことではないと思う。

 

企業の法務部門については,予算の制約は相応にあり,なんでもかんでも外の事務所に頼めるわけではない。頼みたくても予算の壁とか上司の承認が得られないとかいうこともあり,他方で,自力で解決するための手段が,自社内になく,やむなく自分で自腹で資料を調達するというケースも,僕自身経験したことがないわけではない。

また,仮に外部に調査などを依頼するにしても,費用の効率的な支出という観点からは,相応に事実関係を整理した上で依頼しないと,タイムチャージ制だと費用が膨大になりがちなので,普通は一定の整理をするものと考える。特に一定程度内部が整った企業の法務であれば(僕はそうするように言われた育った口なので)。整理せずに相談を投げかけても,欲しい答えが得られるとは限らないように思う。極端にいえば,答えの見えない相談は外部に投げかけてはいけないという話なのだが…。

 

脊髄反射的に思いつくいろいろ書いたけど,要するに,過度の一般化は危険ということ,換言すれば,自分の経験から言いうることの射程は見極めるべきということと,自分の優先順位によって答えの変わる話は,自分の優先順位をしっかり定めた上で考えるべきだということ,これらの点はいずれにしても重要だと考える次第。

 

 

 

*1:かつてこの話題については,歴戦の勇士の戦士さんと議論をしたことがあった…。その点については,こちら辺りをご参照ください

*2:こちらの弁護修習先がそうだった。