ジュリスト 2026年 03 月号

例によって呟いたことを基に感想を箇条書きでメモ。

  • 判例速報。
    会社法の代表取締役を辞任した者の報酬の減額決議と特別利害関係は、解説での税務面からの分析や特別利害関係についての指摘になる程と思う。
    労働法の大学非常勤講師の労働契約法上の労働者性は、労働者性が認められる常勤講師との比較が労働者性を肯定するなかで出てきたのが興味深く感じた。
    独禁法事例速報の発注者の幹部職員を介した入札談合の意思連絡が認められた事例は、意思連絡の認められる限界事例がどのあたりなのかが気になった。
    知財のユーチューバーの肖像等の広告的使用によるパブリシティ権侵害は、解説最後の指摘は確かに疑問の余地ありと感じる。
    租税の非上場株式の相続税評価と平等原則は、判例の準則の適用順序についての批判が興味深く感じた。
  • 海外法律情報。
    中国の国立公園法の制定は、メリハリをつけた感じの保護のあり様が興味深く感じた。
    イタリアの下院における生成AIの活用に向けた取組は、AIを使ったツールの立ち位置やツールができた背景が興味深い。2025年予算法案に修正案が5000超というのは確かに何かしたほうがいいのだろう。
  • 書評。
    赤間聡著『科学訴訟と司法審査――裁判所は科学問題にどのように向き合うべきか』の書評は本書の読みどころの紹介がわかりやすい(内容は難しそうだが)。
    梅田康宏ほか著『伝わる法務――若手・中堅・ベテランの実践コミュニケーション』の書評は評者の立場ならそういう評価になるんだろうなと思いつつ読む。
  • 霞が関インフォの公正証書作成手続のデジタル化は、高齢者の多い公証人がちゃんと使いこなせるのかという気が。補助者が何とかするのだろうが…。
  • 連載/民事訴訟手続のデジタル化のこれから、の弁護士の視点から(1)—電子申立て等は、弁護士側の視点からのコメントが、行間も含めて、興味深い。書かれているように適宜のタイミングで手続の見直しが必要なのだろう。
  • 時論
    「紙の手形・小切手の交換廃止」が意味するもの、は何がなくなり、なくなった後で何が起きるのかについて、手形機能の先祖返りの可能性の指摘も含め、こちらの想像の及ばない話で、興味深く感じた。
    スチュワードシップ・コードの改訂は、「建設的な対話」とは何なのか、誰がいつ・いかなる基準をもって「建設的」かを判断するのかが気になった。
  • Information Loungeは見開き2ページの文章でエグゼクティブサマリーがあることへの違和感で内容が頭に入ってこない。エグゼクティブサマリーを必要とする層がジュリストを読むのかもよくわからない。
  • 判例詳解
    人身傷害保険の件(詳細略)は、仕組みが複雑で、正直話についていけなかった。
    いったい行政上の事務管理の何がいけないというのか、は事務管理成立要件の行政法上の扱い方の検討が興味深く感じた。廃棄物処理はやはりややこしい。
  • 連載/広報と法務の危機管理広報(4)—メディア対応(守り)は、様々な実務的な対応方法についての解説が有意義。とはいえ難易度の高いものが多く、やはり対応するのは大変という思いを新たにする。
  • 時の判例の子ども・子育て支援法の件(詳細略)は、誰の何を保護している定めなのかというところに立ち返った議論になるほどと思う。
  • 判例研究。
    経済法の基本合意等終了後の違反行為と吸収分割承継会社の位置づけ、は吸収分割の影響に関する指摘や「最後に」での同様の違反行為防止対策の不十分さの指摘になるほどと思う。
    商事の安定操作に対する課徴金納付命令が適法とされた事例は、こういうことがこういう形で問題になるのかと思いながら読む。
    株式譲受人による取締役の解任と在任義務違反は、評釈の議論の仕方は契約の解釈として無理がないように思われた。
    警察からの依頼に基づく預金取引停止措置・継続を認めた事例は、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律自体を知らなかったので、こういうことになるのかと思いつつ読む。
    独禁法違反のおそれを理由とする団交拒否の不当労働行為該当性は、独禁法違反の判断の有無の判断の必要性についての指摘になる程と思う。
    離婚時年金分割における分割割合—請求すべき按分割合に関する処分申立却下審判に対する抗告事件は、評釈でのあてはめへの疑問の提示に納得。
    取引単位営業利益法に準ずる方法と同等の方法の適用において、市場の状況の差異により比較可能性がないとされた事例は、比較の難しさの指摘には同意。
    渉外判例の離婚の付随的裁判の間接管轄と人訴法3条の2第7号にいう特別の事情は、管轄についての評釈での批判に説得力を感じる。
  • 最後に特集。宇宙ビジネスの最新動向。
    イントロの短い文章の後の最初は座談会。宇宙活動法の改正と宇宙ビジネスの展望。さまざま話題を含んでいて20頁超になるのも納得。法が未整備の領域について、技術革新の進展や、既存法令との整合性や海外との調和なども含めて考えることの難しさを感じる。
    宇宙分野における公共調達については、特殊な立ち位置を踏まえて、あるべき調達契約について、他分野の知見を使いながら模索している様子が興味深い。開発系の契約では示唆を得られる部分があるのではないだろうか。
    スペースポートを取り巻く法環境は、スペースポートが想像以上に多数あることや、法環境の概観が興味深く感じた。
    有人宇宙飛行の実現と法整備は、こういうところまで議論が進んでいるのか、と驚いた。商業化が進んでいるから国際競争上ルール整備の必要性の指摘については、理解できなくないが、急いで大丈夫かとも感じる。
    宇宙ビジネスと安全保障は、デュアルユースの余地がある以上は厳しめの規制に服することになるのはやむを得ないのだろうと思いつつ読む。
    EU(欧州連合)の宇宙法案は、ここまで議論が進んでいるのが印象深いのとともに、欧州が法制度で他法域をリードしようとする戦略性も感じられて、対応の必要性が高いことも感じる。
    この特集は、普段の業務では接しない世界の話で、興味深いとともに、SFの世界と感じていたことが結構近い将来の話になってきていること、それ故に規律の整備の必要性が高まっていることが印象深かった。