ジュリスト 2025年 07 月号

目を通した範囲について、呟いたことを基に、箇条書きで益体もないメモをしてみた。

 

  • 判例速報。
    予定されていたスクイーズアウトの不実施は、売り手が交渉の仕方が下手だと救済しづらいということになるのかなと思いつつ読む。
    労働判例の客室乗務員の勤務状況と労基法の休憩時間規制は、労基規則32条2項の存在を認識していなかったので(汗)、そういう規制があるのかと思いつつ読む。
    独禁法事例速報のグローバルレベルでの問題解消措置が講じられた事例は、グローバルレベルの問題解消措置それ自体や他所の当局の判断を参照しながらの紹介の仕方、当局間の事実認定過程の違いがそれぞれ興味深い。
    知財の美容クリニックにおける組成物の製造と特許権は、解説最後の指摘になるほどと思う。
    租税判例速報の複合構造家屋の固定資産評価は、話について行けなかった。
  • 特集1は労働基準関係法制のこれから。
    イントロの文章の後は労働基準関係法制の見直しの方向性についての座談会。研究者2名と労働者側の弁護士の先生と経営側の弁護士の先生の対談。当然のことながら(?)実務家お二人の間のやり取りは立ち位置の差異を出ている感じで、一定程度話はかみ合っているものの、そこから先は見ているものが違うから話がかみ合っていないのではないかと感じるところもあった。こちらも立場的には経営よりのはずだが、総じて労働者側の先生の言い分の方が納得感が高く感じた。特に両先生のテレワークに対する態度が興味深く感じられた。
    労働基準法上の労働者性と家事使用人の適用除外については、前者の部分の議論が興味深かった。難しい問題のようにも見え、今後の議論の動向が気になるところ。
    労働基準法の「事業」概念の何を見直すべきなのかは、「事業」概念がどういう機能を担わされていたのかを認識していなかった(汗)。議論がややこしくなっているということは感じた次第。
    労使コミュニケーションと過半数代表者は、進められている議論で「過半数代表者のリアルな顔がみえてこない」という指摘には同感するものの、問題点に対する著者の解決策の案には疑問。組合がないから過半数代表者をおいているところで、交渉と協議のために組合を作るという選択肢が機能するか疑問。むしろ今時は、労働者側に不満があれば何も言わずに転職という選択肢の方が取りやすいことが多い(常に、ではないが)のではないか。それとの兼ね合いで、人の確保の要請の中で結果的に待遇改善が図られる方向性に行くかどうか(技術による省人化もあるので)が問題になるのではないか。
    労働基準関係法制研究会報告書と労働時間法制のこれからは、労働時間周りの議論が興味深かった。とりあえずウエラブル端末で管理されるのだけは勘弁してほしいと強く願うのであった。
    特集は、あまり労務系の話に関わっていないこともあり、最近の労働環境の変化を踏まえた議論の状況が垣間見えて有意義と感じた。
  • HOT issueは第三者委員会をめぐる論点。実務家2名と元官僚(というか今は国会議員見習い?)での鼎談。指摘されているポイントには納得するところが多かった。個人的に気になっていた秘匿特権との関係の指摘もそうだし、立ち位置の中途半端さ、取締役会が受領し、内容を検証(verificationと言われても却ってわかりづらい)し、公開の判断をしたり、対策の完了まで責任を持つべきとかというのは納得するところ。
    他方で、このメンバーである必然性に欠ける気がしたし、実務家2名なのに、第三者委員会の「中の人」経験からのコメントはなかったうえ、元官僚の方のコメントも、人権DDに関する言及は話が逸れる感もあり、疑問が残った。指摘されている内容であれば他の人でも言えたのではないかとも思った。
  • 特集2はドワンゴ事件最高裁判決の検討。
    最初は学者の方による判決概要と意義について。知財は扱わない(別部隊がいる)企業内法務でほぼ何も知らない状態で読んで、概要がわかりやすくまとめられていて良いと感じた。
    実務家2名の手によるドワンゴ最高裁2判決の概要と意義は、不勉強もあって、なるほどと思いつつ読む。射程が不明確なのはやむを得ないのではないかと感じる。これからの事例の蓄積を待つしかないのだろう。
    ビジネスサイドの方の手によるネットワーク関連発明の特許法改正に関しては、改正を急ぐべき理由として挙げられている内容のうち、一度機会を逃した場合の不利益についての指摘が興味深く感じた。
    特集は、普段特許周りに関わらないので、こういうものなのか、と思いながら読んだ、という程度。
  • 書評。
    「民主主義法学の憲法理論」は著者のお弟子さんによる書評。マルクス主義法学それ自体初めて目にする言葉なので、よくわからないが、グランドセオリー(これもよくわかっていないが)に支えられたものらしいことだけは理解できた。
    「類型別 企業間取引契約書作成のポイント」は、読まないとと思っている本についての藤野先生の例によって読みどころの熱い紹介が、いっそう読まないと、という思いを強くさせてくれる。
  • 海外法律情報。
    ドイツの氏の決定の柔軟化は、指摘のあるように日本への示唆に富んでいると感じた。
    アメリカのワシントン州、化粧品の動物実験を禁止する12番目の州に、は世界的な潮流は理解するものの、動物実験なしで安全性確認とかがどこまでできるのか気になった。
  • 地方創生に向けた官民連携の法実務は地方創生×ツーリズム。DMOとか全く知らなった。必要なところもあるのだろうが、むしろオーバーツーリズムを何とかしなくてよいのかということを強く感じた。
  • 連載/家庭裁判所の現状と展望の最終回は少年法改正による変化と少年非行の動向—家庭裁判所調査官の視点から。SNSの影響とそれへの対処が興味深い。
  • 時論のNTT法をめぐる諸問題は、同法をめぐる現状が興味深い。インフラの維持管理が今後ますます困難になる中で規制緩和をどこまですべきなのかが気になるところ。
  • 時の判例
    退職慰労金の件(詳細略)は、経営判断原則が持ち出されなかった背景についてのコメントが興味深く感じた。
    年金一元化の件(詳細略)は、定年後再雇用で勤務先の都立高校が変わると事業所変わったという扱い事態が妥当に見えなかった。建て付けが変な気がした。
  • 判例研究。
    経済法の航空再編と市場競争は、事実認定についての突っ込みに納得。羽田と成田を一緒くたに扱うのはこちらも違和感を覚える。
    商事の「車の所有、使用または管理に起因して生じた」の解釈は、評釈最後のコメントになるほどと思う。
    両替機から回収された金銭の所有権及び信託の成立は、信託にも業務上縁がないのでそういうものかと思いながら読む程度。
    違法性リスクのある事業実施の経営判断と検討過程の虚偽説明は、評釈での、当該事案における任務懈怠の理解の仕方に納得。
    労働判例の地方公務員の同一法人内の異動と一元化法の経過措置継続の有無
    は、時の判例で扱っていた件だけど、評釈最後で示された問題意識に賛成。
    総合職のみを対象とする社宅制度運用の間接差別の成否は、制度それ自体とその運用を分ける考え方になる程と思う。
    租税判例の外国子会社合算税制における租税負担割合の計算上財務書類の事後修正は認められないとした事例は、話について行けなかった。
    渉外判例の執行判決訴訟の国際裁判管轄が認められた事例は、執行判決訴訟にもなじみがないので、そういうものかと思いながら読む。検討せずに済んだ論点の検討のために判断に時間がかかったという指摘に苦笑。