音楽と契約した男 瀬尾一三 / 瀬尾 一三 (監修)

1970年代から活動している音楽プロデューサー瀬尾一三さんの回顧録とでもいうべきもの。ご本人が文章の人ではないからであろうか、ご本人の言葉をライターの方がまとめているのだけど、文章がうまいのと、たどられた時間の濃密さから、引き込まれるように読み進んだ。

 

瀬尾さんというと、個人的には中島みゆきさんのプロデューサーという認識(この30年やっているというから間違ってはないが)だったが、1970年代(厳密には1969年から)からずっと活動されていた方だった。巻末の膨大な作品リスト*1にその点は表れている。そこから今に至るまで、現役のプロデューサーだったわけで、そのことだけでも、驚くしかない。僕は中島みゆきさんとの共同作業しか知らなかったが、その他にも、僕が聴き覚えのある範囲でも、Chage & ASKA長渕剛徳永英明、杏里などの作品も出がけていたとは知らなかった。

 

学生の頃から70歳を過ぎるまで50年、現場の第一線に居続けたというのは、何よりも凄いと思うし、めぐりあわせとかが良かったという面があったとしても(めぐりあわせを上手く活かしている様子も随所に見られる。)、書かれている仕事ぶりからすれば、そういう結果が付いてきてもおかしくないのだろう。好きな分野において、自分の能力で生計を立てていくという面では素直に尊敬するしかない。少しでも見習えればと思うのだが…。

*1:老眼に厳しいフォントになっているが、限られた紙幅の中に収めるにはやむを得なかったのだろう。