マンションがらみの案件に使うかなと思って買ってみたものの、しばらく積読だったもの。一通り目を通したので感想をメモ。
マンションにまつわる法律関係について、解説をしたもの。同じ出版社から出ている、我妻栄先生の「民法案内」を意識しているとのこと。
マンションを購入してから老朽化して建て替えるまでの「ライフサイクル」に沿うような形で、様々な法律が錯綜するマンションをめぐる法律関係について、法律とは言い切れないものの事実上影響する、標準管理規約の類も含めて、平易な語り口で解説してくれているので、この分野の法律についての「入口」としては良いのではないかと感じた*1。
いくつか印象に残った点をメモしておく。
- 物権法に関連するところでは、一物一権主義との調整の仕方や、区分所有権の限界に関する上塗説についての検討の部分が興味深かった。これまであまり意識したことがなかったのだった。
- 建て替え決議や、団地の管理に関する意思決定のプロセスについては、それ相応に意味があることが、丁寧な解説のおかげで理解できる反面、プロセスが複雑すぎて、実際に規定に従って、意思決定をきちんとしようとすると気が遠くなるような印象が残った。大規模のマンションで住戸を所有することには、この点についてのリスクを背負うことになるということを感じた次第。
- 建て替えなどへの非参加者の住戸所有者の排除の仕方は会社法でのスクイーズアウトめいたものを感じたけど、結局お金で解決するしかなく、そうなると、そのお金をどこかから調達してくる必要が生じる。金額も大きくなるので、デベロッパーとかが入ることで、その点に対応できれば良いのだろう。ただ、今後は、この国の人口減少によって住宅需要は減るだろうし、そうなると、営利企業たるデベロッパーも状況によっては、関与を避け、その結果、資金面の手当てが付かずに建て替えが進まないという事例も出てくるのではないか、そういう気がした。そうなったら、特に耐久性等に問題のある物件については、行政側からの支援ということに考える必要が出るのかもしれないが、行政側についても、そこまでのことをする体力があるかどうかも危うくなってくるかもしれない*2。