一通り目を通したので感想をメモ。当事者が書いた一冊としても稀有な要素があると感じたし、事業承継に関心があれば目を通しておいて損のない一冊と感じた。
(企業内)弁護士と中小企業診断士という資格の使い方を考えたときに、両方の資格が活きる場面として、中小企業の事業承継は一つの答えになるのではないか、そのような示唆を診断士の実務補習で指導員の先生からいただいたこともあり、ここしばらくは関連する本(法律書も含め)を読んでみようかと思っていたところ、本書が出ていて、購入して目を通してみた*1。大塚家具をめぐる一連の「お家騒動」は、事業承継の在り方をめぐる騒動だったともいえるが、その騒動の当事者、つまり事業承継の当事者の視点から、事業承継の在り方について、特に承継過程で生じる葛藤に焦点をあてて書かれた本ということになろうか。感情面は扱いづらいところではあるが、敢えてこの辺りに焦点を当てることができたのも当事者だったから、なのだろう。
例の「お家騒動」の件については、一方当事者の発言であり、ご本人にとっては不本意な形での退社であったことは想像に難くなく、その意味でも事実認識に一定のバイアスがかかっていても不思議ではないから、こちらでその分割り引いて読む必要があるかと思ったが、事前に想定していたよりは、相対的に冷静に振り返っている印象があった。
他方で、論の進め方は、退社後にコンサルをされていたり、経験談を話す機会が多かったりしている所為か、個別の事例を踏まえつつも、一般論に昇華された形になっていて、経験談とのバランスも良く、経験での裏打ちがあるからこそ、論にも説得力が出ていて、そういう意味で、なかなか類書のない一冊になっているのではないかと感じた。
法務という側面で見ると、第2章でのファミリー企業のガバナンスについての議論と第4章でのM&Aに関する議論が特に興味深く、第2章で、先般話題になった某芸能事務所も引き合いに出しつつ、非上場のファミリー企業でのガバナンスの限界について指摘しているあたりは、なるほどと思うことが多かったし、第4章で、外部へのM&Aについての難しさの指摘も納得するところが多かった。
本書中で指摘があるように、中小企業の後継者不足の中では、外部へのM&Aも選択肢となることが増えると思うが*2、そういう事例に立ち会う際には、本書の記載は示唆に富むと感じた。
