株主総会有事対応の理論と実務 / 生方 紀裕 (著)

しばらく積読山にあったが、今更ながら一通り目を通したので感想をメモ。既に記載が古い部分もあるかもしれないが、総会関係の業務に従事する法務担当者*1であれば一読しておいて損はない一冊と感じた。

 

書名にあるように、株主総会における「有事」についての対応策に関して、理論的な解説と実務的な対応を解説した本。こちらはこれまでのところ、総会における「有事」に関わったことはないが*2、だからこそ、「有事」になったらどうなるのかということは気になるという面もある。もちろん、企業内法務の担当者だけで対応することはなく、相応の知見のある外部の弁護士さんの支援を受けながら対応することになるとは思うが、一定のことは知っておいて損はないだろう、そう考えて出た頃に買ったのであった(という割に購入後3年近く積読だったが)。

 

本書は10章構成。全体のイントロとなる短い第1章の後、株主提案権、株主総会招集請求権、議決権の代理行使と委任状勧誘規制、敵対的買収とその防衛、総会検査役制度、株主による会社情報の入手、株主総会の招集・決議をめぐる訴訟・仮処分、定時株主総会における有事対応、臨時株主総会における有事対応、と章が分かれている。定時株主総会に関わる部分の一部*3以外は、いずれについても、自分では経験したことがない*4ので、内容の当否はコメントのしようがないのだが、そういうものかと思いながら最後まで拝読した。

いずれの章でも、問題になりそうなところの理論的な背景と実務的対応を可能な限りよりどころになりそうな文献類*5も示して論じているところは安心感があるし、手続書類などについては、イメージも付されているので、問題の所在やどういう風な形で事態が推移しそうかもイメージしやすくなるのではないか。企業内では法務担当者が一人だけで外部の助けなしに対応に当たることはあまりないだろうと思うものの、一読しておけば、少しでもイメージができるだけでも、有事に臨むにあたっての不安を少しでも減らすことになるのではないかと感じる。不安から生じるミス(しかも有事の場合は大きな被害をもたらしかねない)を少しでも減らせるのはそれ自体が有用と考える。そういう意味で目を通しておいて損はない一冊と思う。

 

本書の中では、まだ「公正な買収の在り方に関する研究会」が指針をまとめている段階とあるが、既に指針が出て、事例も一定数積み重なっているところなので、そろそろ改訂版が出てほしいし、今検討中の会社法が改正され、改正後の実務が蓄積されたところでさらに改訂されることで、長く読み継がれてほしい。

 

*1:機能としてのそれであり、部署名は問わない。

*2:東日本大震災直後の総会(招集通知発出から総会開催までの間に震災があった)は経験して、それなりにいろいろあったが、それは災害対応というべきものであり、本書でいうところの「有事」ではない。

*3:株主提案のない定時株主総会しか経験したことがない。

*4:精々過去の勤務先で名簿閲覧請求が来たことがある程度。

*5:古典的なものまで引かれているところも印象的である。