ジュリスト 2025年 12 月号

例によって呟いたことを基に目を通した範囲の感想を箇条書きでメモ。

  • 書評。
    ストゥディアの「民法2物権」のは、良さを伝えて、読んでみようと思わせてくれるという点で優れた書評と考える。
    野田博著『CSR・ESGへの法からの多面的接近――企業と環境・社会』の書評は読んでみようと思わせてくれる点で良い書評なのだろう。
    「公共部門労働法」の書評は物足りない部分の指摘がきちんとなされているのが重要と感じた。実務的な用事がないので、こちらが読むことはないと思うが。

  • 海外法律情報。
    フランスの受刑者の選挙権—一部選挙における郵便投票の廃止は、受刑者が刑務所で選挙権行使する場合の影響の指摘とかが興味深い。
    英国のスターマー政権下の統治機構改革は、王室財産法の内容が現代的で興味深く感じた。
  • 判例速報。
    会社法の会社による併存的債務引受けと代表取締役の対第三者責任の成否は、原告の主張がやや謎だったのでわかりづらく感じたが判旨と解説の内容は納得というところか。
    労働法の労働組合を脱退し他組合に加入した組合員の不当労働行為救済の可否は、個人に団結権団体行動権が認められるのであれば判旨は当然という気がした。
    独禁法の家電メーカーによる流通業者の販売価格の指示についての相談事例は。何が明らかになって何がそうなっていないのかの指摘もなるほどと思ったが、最後の指摘にもなるほどと思う。
    知財の報道写真の利用と引用の成否は、量的な比較だけで主従関係を判断することの問題点についての指摘が興味深く感じた。文字数制約のあるtwitter上では特に重要になると思うので。
    租税のふるさと納税返礼品に係る法的統制は、解説での財政民主主義からのY町主張へのツッコミが鋭く感じる。
  • 連載/民事訴訟手続のデジタル化のこれからのフェーズ3における運用の検討(4)—書証・電磁的記録に記録された情報の内容の取調べは、こんなものなのかなと思いつつ読む。電証のファイル形式として想定されている範囲が足りているのかは疑問。
  • 連載/地方創生に向けた官民連携の法実務の官民連携と災害対応では、コンセッション方式の施設での災害対応時の難しさの指摘になる程と思う。契約で書ききれないところが出そうな気がする。
  • 判例詳解の別荘地の管理と費用利得は、評者の判旨批判に疑問。利得の押し付けになるというのが釈然としない。
  • 時の判例民法709条の不法行為を構成する行為は宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たるかは、宗教法人法81条1項1号の解釈論が、興味深かった。
  • 判例研究。
    商事の裁量信託における受託者の裁量と信託帳簿等当社請求の対象は、裁量権の逸脱濫用の考慮不尽への批判になるほどと思う。
    公募美術団体(公益社団法人)の社員除名決議の有効性は、団体の性格も踏まえた判旨への評釈での批判に納得。
    簡易株式交換への反対通知に個別株主通知が必要とされた例は、最後に指摘されている実務上の問題点に納得。
    労働判例のマンションの売却代金全額に対する保護費返還請求の適法性は、制度上の問題点についての指摘にはなる程と思う。
    大学非常勤講師の労働契約更新拒否による雇止めの効力は、評者が挙げた3点のポイントについていずれも興味深く感じた。
    租税判例の租税条約における居住者概念の意義は、話についていけた感じがしなかった(汗)。
  • 最後は特集。新しい動産・債権担保法。
    イントロの短い文章の後は道垣内弘人先生の特集の趣旨説明。海外向けの動機に基づく立法というのはそれだけで不安になる。
    〔座談会〕譲渡担保法の実体法的側面。座談会が2つというのもなかなかすごい。法制審議会担保法制部会のメンバーというのもすごい。写真を見ると笹井法制管理官だけやけに若く見える。山中先生のブログの記載によると50前後とのことだが、もっと若く見える。元々こちらが担保物権とか不勉強なので話についていけた感じがしないが、笹井さんのコメントを見る限り、諸々のバランスをとりつつも、これまでの実務から大きく変えないようにしようとしているようには見える。とはいえ、座談会でいろいろ疑問が出ているところも考えると、変わる部分は出るのだろう。
    〔座談会〕譲渡担保法の手続法的側面。笹井さんだけ共通して出席。忙しいはずの官僚の方が座談会2つに付き合うというのは、この特集がある種法務省の意に沿うものということの表れなのかなと余計な推測をしてしまう。倒産場面での問題点についての議論など実体法上の側面での議論よりもより具体的な場面での議論がなされており、不勉強ゆえについていけなかったものの、ついていけないなりに、これまでの実務の条文化と言っても言葉にしようとしたことものの、零れ落ちている部分が多いのではないかと感じた。
    新法における担保法制の枠組み—米国UCC第9編の統一的担保制度との対比は、基本的な考え方の差異から生じた条文上の差異や今後への示唆が興味深く感じた。
    動産譲渡担保における占有改定劣後ルールの導入は、対抗要件理論の適用場面についての議論が興味深く感じた。控えめに言ってどこまで話についていけたのかはわからないが。
    譲渡担保権設定者の倒産手続と事業の継続では、倒産手続きの中ではこういう整理がなされるのかと、わからないながらにも思いつつ読む。
    担保目的財産の広がりと労働債権の履行確保措置は、労働債権の保護状況の解説が分かり易く感じた。ちょっと手薄な気もするし、それが良いとも思えないので、何らかの措置があっても良いのかもしれない。
    企業価値担保権と集合物譲渡担保権の対比については、両者の違いから、企業価値担保権とは何かを説明する感じ。モニタリングなどが必要そうで手間がかかりそうだからどの程度使われるのかはよくわからないというのがこちらの印象。
    特集については、こちらの担保物権、特に譲渡担保に関する不勉強で話についていけない感じがしたが、これまで個別最適で(裁)判例や実務が積みあがっていたのを明文化しようとしたら、整合性を取るのが難しくなっているのではないかと感じた。