月刊法学教室 2025年 12 月号

例によって、呟いたことを基に、目を通した範囲の感想を箇条書きでメモ。

  • 巻頭言は、まあそうだよね、と思いつつ読む。刑事手続が電子化されて、証拠開示とかが容易にできるように狩りになったとしても、そのことは証拠が実際に開示されやすくなることを意味しないしな...などと思う。
  • 法学のアントレは、ここしばらくは「恩師」がテーマ。今回の執筆者の恩師の方も素晴らしいと思う。
  • 特集は刑事訴訟法の解釈における判例・実務と学説。
    イントロの文章の後は強制処分の意義。H29判決の分析での個人の抽象化が許される理由についての指摘になるほどと思う。
    強制処分法定主義では、検証概念の変化についての解説やH29判決と標準理論との関係についての指摘が興味深く感じた。
    公訴事実の同一性は、やはりわかりづらいと感じた。できの悪い条文のドラフティングを運用で無理にカバーしている所為ではないかと感じるのだが(汗
    取調べ受忍義務は、学説側の頑な(という言い方がいいのかはさておき)態度の弊害への指摘が興味深い。元検察官の方からの指摘という点も含めて。
    起訴の基準は、起訴により生じる事実上の不利益の大きさへの手当てなしには実務を変えるととんでもないことになると懸念する。
    特集は判例・実務と学説との距離の遠さ、対立関係が印象深い。昨今の再審に関する議論をチラ見している限り、問題のある状況をかえるのは議員立法しかないのではないかと感じる。
  • 時の問題は、原子力発電所の規制と安全審査。関係法令の規定の仕方の問題点についての指摘が興味深く感じた。
  • 新法解説は刑事手続きのデジタル化に関する法律(詳細略)。著者が立法過程に関わっていることから、今回の記事とは無関係というような記載があるかと思ったら、そういう記載がないのが、ちょっと新鮮な印象。通訳や鑑定人の希少性についての言及があったけどそのうち弁護人の希少性も考えないといけなくなるのではないか。
  • 講座。
    憲法司法権。理論的な部分で話についていけなかった。前提となる知識を知らなすぎるという点が主な理由と思われたが、学部生向けの講義でこのレベルってどうなんだろうと思わなくもない。
    行政法は第三者原告適格。墓埋法に関する令和5年最判の検討、特に「残された課題」についてのコメントになるほどと思う。
    民法背信的悪意者とこの周辺。ローエコな議論というか議論の説明の仕方についていけない気がする。
    会社法コーポレートガバナンス・コードは何を実現するのか。かのコードに対しこちらの抱く疑念が一通り触れられているので印象が良い。
    刑法は賭博罪。富くじ罪の処罰根拠。保護法益の分析など興味深く感じた。まくらの山椒魚の話の回収の仕方には、そう来るか、と驚いた。
  • 演習。
    憲法は就活。某訴訟がネタ元?と思ったら、解説で出ていた。内容は興味深いが就活という表題を付すのが適当なのかは疑問。

    行政法は規制権限不行使の違法。4つの考慮要素の作用の仕方についての説明になるほどと思う。
    民法は相殺と差押え。民法511条2項について倒産法との関係の説明は、興味深く感じた。
    商法は非公開会社における適法な有利発行かつ不公正発行と対第三者責任。閉鎖会社における議論の説明が興味深く感じた。
    民訴は反射効と既判力のあたり。難しいなあと思いつつ読む。
    刑法は従犯と共犯というあたりか。そういう話あったよなと思い出しつつ解説を読む。
    刑訴は別件逮捕・勾留と余罪取調べ。この両者は法的には別個の異なる処分に関する異なる規範の問題という指摘に納得。同時に問題になることが多いのは確かだけど。
    労働法は長時間労働安全配慮義務のあたり。ステップアップでの取締役の責任についての解説が重要と感じた。

  • 判例セレクトの「判例の動き」。1年分の振り返り。
    憲法は、国籍についてのものは、取り上げられていなかったもので、指摘になるほどと思う。
    行政法も見ると思い出すものが多い。
    民法事務管理判例が出ているのが印象的。
    商法は、掲載されている中では、事件の帰結やその後に問題となった件も含めて、ニデックの件が印象深い(決定文とか読もうと思っているが読めていない)。
    民訴は無断録音会話が違法収集証拠として排除された事例が改めてみると印象深い。民事でもこういう争いが生じるという意味で。
    刑法はクレカとキャッシュカードとで名義人の同意があっても効果が違うとした件が改めてみると興味深い。
    刑訴は不正確な法廷通訳と手続きの無効の件が、改めてみると興味深い。
  • 今月の判例セレクト。
    行訴法10条1項の主張制限の件(詳細略)は、主張制限をしすぎということにならないのか疑問に思った。主観訴訟だからこういう整理になるのだろうけど。
    持続化給付金訴訟最高裁判決は、解説での許可制と届け出制の区別に関する指摘に納得。
    商法の株主代表訴訟提起後の取締役会議事録等の閲覧謄写の許可の件は、解説での他に取りうる手段についての指摘になるほどと思う。
    弁論の更新の件(詳細略)は、手続的正義は貫徹されるかもしれないが、合議のうち1名だけの交代でそこまでする必要があるのかはよくわからない気が。
    殺人未遂罪の不真正不作為犯の成立が認められた事例は、本件での作為義務の発生根拠に関する解説での分析になるほどと思う。
    接見等禁止の裁判に対する不服申立ては、この事件での接見等禁止の必要性の検討方法についての解説での指摘に納得。