一通り目を通したので感想をメモ。個人的には相性が合わなかった。
技術の進展が法律の世界にどう変化をもたらすのかを広範に論じた本ということだろうか。その種の事柄を長く研究してきたイギリスの研究者(80年代にAIと法律に関する博士号を取得)の手によるもので、英米の現況及び今後への予測が語られていて、末尾には、本書を翻訳された日本の弁護士の方が日本での状況について付言されている。生じる可能性のある変化についての予測は、予測である以上、記載の通りになるかは不明確であるものの、示唆するものがあるのは事実だろう。
しかしながら、いくつかの点で違和感が残った。煎じ詰めればこちらとは相性が合わないというのが、結論ということになろうか。網羅的ではないが、気づいた範囲のものをメモしておく。
- 上記のバックグラウンドもあってだろうが、技術オリエンテッドなポジショントークめいたものを随所に感じた。技術に前向きな「慈悲深いカストディアン」か技術に警戒心を持つ「嫉妬深いガードマン」か*1、というようなある種のレッテル貼りとも見える表現等にも違和感を禁じ得ない。
- 一定の留保は起きつつも、結局は効率と利便性だけで法律サービスを捉えているように見えたところも疑問が残った。その2つが重要ではないというつもりはない。その2つだけを考えれば議論は著者が言うような事態が生じてもおかしくはないとは思うが、それらがすべてとは思えない。倫理観のない効率と利便性の追求が「質」の低い・悪いサービスを蔓延させる危険に対して、どこまで自覚的なのかが気になった。
- 現状での欧米との法律サービスの普及状況の違いから、著者のこれから先に関する議論を日本に適用したときにどうなるのかという点が十分見えない気がした。この点に関しては、本書の翻訳者の方が、本書での議論を日本に適用した場合についての私論・試論が巻末に付されているが、直近の状況をどこまで取り込めているのかという点で疑問が残った。
*1:こちらは前者でなく後者に該当するのは間違いないのだろうが、こちらは別に技術に嫉妬しているわけではないということは付言しておく。こちらは、真に出来の良いサービスであればサービスそれ自体が最良のセールスマンであるなずなのに、余計な宣伝などをしている、そうした行為をしていることそれ自体で出来の悪いともいえるサービスベンダーにいら立ちを覚えているのは事実だが。
