一通り目を通したので感想をメモ。契約解釈の「教科書」として、おそらくは、目を通しておいて損はないのだろう。
元裁判官で最高裁調査官経験者の著者が、契約書の解釈について、最高裁判例から、考え方をまとめたもの、ということになるのだろう。典型的な契約書だけではなく、遺言や約款類も俎上にあげて、それらについてもその解釈論は契約と大きく異ならないとしているのも興味深い。順を追って丁寧に解説を進めていく形なので、読みづらくはない。契約書等に関する法曹等の優位性の根拠として、訴訟になった時にその契約がどのように解釈されるかを予測できることがあるとするのであれば、究極的には、最高裁がどういう判断をしそうか予測できるのは、おそらく重要なのだろう。そうしたことを考えると、本書は、おそらく目を通しておいて損のない内容ということになるのだろう。その限りでは、こちらも特に反対するものではない。こちらも一読しただけではどこまで理解できたのか怪しい気がするので、可能であれば時間をおいて再読すべきと考えている。
とはいえ、読んでいて気になったこともある。そのうちのいくつかをメモしてみる。いずれについても、前述の本書の価値に大きく影響を及ぼすようなものではないのだが。
- (従前からこちらで繰り返し述べている裁判規範と行為規範の再掲になって恐縮だが)訴訟になったら、ということを想定することにどこまでの意味があるのか、というところには個人的には疑問は残る。もっとも、意味がない等とまで言い募るつもりはなく、それがすべてとは限らないのではないかという程度のことだが。世の中で取り交わされる契約書のうち、その解釈が訴訟の形で裁判所に持ち込まれる割合はどの程度かを考えれば、こういう風に考えたとしても、まったく的外れとまでは言えないのではなかろうか。また、企業間取引で、取引が反復継続することが前提の場合は、少なくともこれまでの日本では、訴訟提起は最後の手段という色合いが出ることが多いため、訴訟提起ははた目で見るよりもハードルは高いかもしれないし、仮にそうであれば、前述の優位性を強調するところにどこまでの意味があるのかは、やはり疑義がありそうに思われる。
- 本書の帯には契約書の作成に活かす、というようなことがあるが、記載の内容を実際のドラフティングに活かすのが容易かというと疑問が残った。本書で書かれているのは、契約等の文言の解釈についての解説で、ではどのように具体的な文言を記載していれば問題が回避できたのか、というような記載は見当たらないからそう感じるのだが。この辺りは編集側の問題なのだろうか。
