一通り目を通したので感想をメモ*1。この分野の教科書としてよい本と感じた。
この分野の重鎮、と言ってもおそらく問題のなさそうな岡村先生の手による、法曹等向けの教科書というところか。一般向けの新書と対をなすのかもしれない。また、分厚い書籍と全体像の見通しの良い教科書という意味では白石先生の講義と体系書の組み合わせも想起される。
全体として240頁ほど、QA形式で各記事が書かれているが、条文のほぼ全体に触れている感じで、行政機関の義務等、企業内の人にとっては関係が薄い部分も含まれているが*2、十分通読可能な分量で、一通りの話題に触れている感じ。細かい話は分厚い書籍に委ねる前提なのだろう。分厚い本があるからこそのこの割り切りという側面もあると思われる。基本的には条文に沿って解説をしたうえで、最後に実務的な解説もなされている。その中では個人的にはプラポリの位置づけについての指摘や企業内部での体制構築の話まで書かれている点が印象深く感じた。
個人的に良いと感じたのは、根拠となる条文やガイドラインがどこか記されている点。この分野では、法律の立て付けも歴史的経緯もあって複雑なうえ、ガイドラインとかも色々出ていて、この分野の専門家以外にとっては、全体構造が複雑怪奇になっていて、それらをいちいち確認するのも煩雑。記載の内容を疑うわけではないにしても、解釈論に疑問を感じたときに、相対的に確認がしやすい形なのは、個人的には安心できる。また、直接の実務には関係ないかもしれないが、この法令の改正経緯や、法律自体の骨格のようなものが最初に示されているのは、この法律の全体像を過不足なくとらえようとするときには重要なのではないかと感じる。
先に目を通したこの分野の似たようなボリュームの書籍との比較では、相対的に実務からは遠いかもしれないが、しっかりと法律の骨格や解釈論を示してくれている点で、本書の方が、個人的な好みには合うと感じた。実務的な話に行く前に本書をしっかり読んでおいて、この法律の基本的な部分の理解を深めたほうが、いきなり枝葉の部分に分け入っていくよりも、良いのではないか。その意味では、この分野について、同じ著者の新書又は「60分でわかる」シリーズのいずれから入ったとしても、本書を次に読んで、その後で、必要に応じて分厚い本に挑むべきなのではないかと感じる。
もうそろそろ個情報が改正されるのではないかと思うが、今後も適宜のタイミングで改正に伴う改訂を重ねていただき、長らく読み続けられてほしいと思う。
