表題が長いが、掲題の抜き刷りを拝読したので感想をメモ。
著者は田中幸弘先生@新潟大。こちらが勝手に私淑している師匠である。時折抜き刷りのpdfコピーを送られてきて感想を述べよとのお達しが来ることがある。こちらの能力の範囲でなにがしかの折り返しができることもあれば、出来ないこともある。今回は学会発表の抜き刷りに一通り目を通すことができたので、雑駁な感想などを以下メモする。
学会発表を文字起こししたものと思われ、ライブ感はあるが、息の長い文章になっていて、書き文字としては少々読みづらいが*1、まあその辺はご愛敬ということなのだろう。
ざっくり言って、DXの中で企業法務の分野での公証制度の活用の仕方として、大量の電子文書に一括で確定日付を付してタイムスタンプに使うというアイデアを呈示されている。そのアイデアに至る伏線が、著者の若かりしころに紙ベースで、大量の文書に一括で確定日付を取る方法であり、それで特許まで取得(今は失効しているが)したというのが出てくるのは、なかなかに興味深く感じた。過去のアイデアの延長線上で、現在の技術・制度の下で何ができるかを考えるというのは、「外挿」として、なかなか興味深く感じた。若い時の自分がしたことを、時がたったところで、再度振り返り、新しい形で蘇らせるというのは、なかなかに味わい深いものを感じる。
アイデアとしては興味深いし、こういう形でアイデアが出されることは重要であると感じる一方で、こちらのような、非金融系の企業で法務を長らくしている立場からすれば、いくつか疑問がある。
- そもそも公証までする需要がどこまであるのかというのは気になるところ。個人的に経験した範囲で、契約書について公証までするケースはゼロではないものの、それほど多くないし、他の文書についても公証までした例はやはり多くない。DXとやらが進展したとしてもそれによって公証ニーズが増えるかどうかはよくわからない。もちろん、DXでタイムスタンプを付す需要は一定程度あるが、そのために公証を使うのはやや「重すぎ」な感もあるので余計にそう思う。
- 費用対効果の問題もあろう。タイムスタンプだけだったら、他のやり方もあって、それとの比較で、正当化可能な範囲の価格が提示可能か。公証人の手数料は政令(公証人手数料令)で定められているので、その改正までたどり着けるか、という話になるのではないかと思うが、そう簡単にいくのだろうか。正直よくわからない。ましてや、大量の公証をすることを前提に、包括契約のようなものを結ぶというのが公証人の実務的に許容されるのかも、よくわからない。
・・・とまあ、身もふたもない感想になってしまったが、ご容赦ください>著者。
*1:ついでにいうと誤字も多い。その辺りも含めてのライブ感だろうが。