実務の落とし穴がわかる! IT・AI法務のゴールデンルール30 / 松尾 剛行 (著)

一通り目を通したので感想をメモ。松尾情報法入門という趣のある一冊で、特にITやAIを専門に扱っていないのであれば、手元にあって良い一冊と感じる。

 

ゴールデンルールシリーズで、契約書についてのものと同様に、A弁護士のダメな事例についての解説をしていくという形は共通。文章は分かり易く、全体としても200頁弱とコンパクトにまとめられていることもあって、網羅性はないようだが、この分野におけるハイライト、が要領よく取り上げられているという感じ。ITとかAIを専門に扱っていない人が読むのに適しているという見方もできるだろう。

 

扱うテーマがかなり広範で、通常は情報法の範囲に含まれるとは解されない分野についての話も出てくる。広範な話題を取り上げている分、個々の議論の深堀りまではされておらず、その辺りは文献のガイドがついているが、ご自身が書かれたものが主に挙げられている。ご自身の書いたものだけでここまでカバーされているのは凄いのではないかと感じるし、こういうカバーの仕方をされている先生は他にはあまりいないと思われる。そういう意味でも「松尾情報法」という表現が適切なのではないかと感じる。取り上げられている事例を見ると、広範な理解がないと判断を間違う可能性があることも示されており、こうしたカバーの仕方には一定の意味があることも理解できる。広い分野をカバーしているという意味では松尾先生の広報法務のシリーズに似たものを感じる。また、割に最近の事例等を拾っているのも印象的で、最新動向のキャッチアップという意味で本書に目を通しておくのもアリかもしれない。

 

ITとかAIに関する法務というと、そういうことを専門にしていない企業の企業内法務でも事業運営のツールとして使う以上は、何らかの形で、対応できるようにしておく必要があるだろう。本書のように間口の広い本を、最初のとっかかりとして、より詳細は本書で紹介されている文献やそのほかの文献にあたるという対処の仕方は、AIによるリサーチとかを使わずとも、それなりに効率的なのかもしれない。そういうことに使えるという意味でも、本書を一読の上、座右に置いておくことには意味があるし、そういう使い方は、こちらのように、ITとかAIから遠い事業内容の企業ほど、意味があるのかもしれない。願わくは、動きの速い分野でもあるので、適宜のタイミングで、アップデートを続けてもらって、長らく読み継がれてほしいところ。筆の速い松尾先生相手であれば、それほど過分な望みではないものと考える。