一通り目を通したので感想をメモ。類書も見当たらないと思うので、日系企業の法務で海外周りに関係するなら、手元にあれば便利な一冊かもしれない。
ベーカー&マッケンジーとKPMGといういわゆるグローバルファームが日系企業が海外子会社を管理していく中で問題となりそうな点やその解決方法の一つとしての管理体制の構築について解説している本、というところだろうか。前半で様々な分野の法的リスクについて解説し、後半でそうしたリスクへの対応策としてグローバル法務・コンプライアンス体制の整備と運用について解説している。全体が320頁程度とコンパクトかつ通読可能な分量に収め、解説も適宜図表を用いており、読みやすくまとめられていると感じた。
相応のネットワークと経験を有しているところでないと情報を集めたり集約したりできないだろうし、仮に書籍として出せるだけの能力があっても、あえて外に向かって書籍として出す誘因がどこまであるかわからないので、類書が出にくいのではないかと感じるところ。この種の書籍を出す著者側のメリットとしては、これだけのことが書けるのだから、体制構築や実際に問題が出たときの対応についての案件が持ち込まれることを期待してのことだろう。そうなると一定以上の話は書かれていないのは当然とみるべきで*1、その手前のレベルのことがある程度網羅的に、通読可能な程度のコンパクトにまとめられているところに本書の価値があるとみるべきだろう*2。それはそれで依頼者となるべき企業側の人間にとっても価値がある。上記2ファームのようなそれなり以上の能力のあるところのフィルターを通して選ばれまとめられた情報が提供されることには価値があるのだから。目を通しておいて、問題の所在を認識しておくだけでも、対処が遅れずに済むかもしれないし、体制構築についてもヒントは得られるのではないかと思う。
*1:そう考えると、個別の論点について、本書だけで対応するのは困難なところ(網羅的ではないものの全体の鳥瞰ができることに本書の価値があるというべきなのでこの点は本書の欠点ではない。)、個別論点について詳説した本への案内が欲しいと思うが、それを望むのは無理があろう。
*2:なお、ベーカー&マッケンジーとKPMGそれぞれが本書に関連するページを用意してくれている。KPMGの方は法令へのリンク集を含んでいる。本文に記載せず直接飛べる形になっている方が便利という見方もあろうか。
https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2021/07/legal-risk-info.html
https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2024/03/legal-risk-survey2024.html
