一通り目を通したので感想をメモ。こちらも本書の内容について、「わかったつもり」でしかないのかもしれないが、個人的にはそれほどいい本だとは思わなかった。
近所の本屋で平積みされていたこと等もあり、購入してみたもの。
心理学の知見などを用いて「わかったつもり」で、その実そうでもない、文章が「正確」に読めていない状態が生じ得ることを示したうえで、そうした事態にどのように対処するかについて書かれた本、ということになろうか。
本書で説かれているような対応は、「正確」な読みが求められる時、例えば入試や資格試験の時には重要となることもあるのだろう。そのことは否定しないし、そうした場合への対処としては、本書で説かれているような、整合性があって矛盾のない、部分ごとの緊密な連携が保たれた読み方をする必要があるのだろう。この辺りをこの分量で説いているところが、本書の優れた点とされているのではなかろうかと感じた。
そういう意味では、内容についてはご説ご尤もだとは思うのだが、どうも釈然としないので、本書の印象がいまひとつと感じた次第。とりあえず、今思いつく限りでは次のような点。
- 論理を示すための事例で今一つなものがあった点。ファーブルについての文章を素材にした議論には、疑問が残り、論の強引さを感じた。こういうのが一つでもあると全体の説得力が少なくなるのは否めない。
- 文章を読むときに、「正確さ」が求められる状況があるのは事実だが、そうした読み方が強調されすぎていると感じた点。
- 「わかったつもり」になることがひたすらに悪者扱いされているように感じたのだが、そうだろうか、というところも気になった。「わかったつもり」になることが時として理解を進める上では重要なのではないかとも思うので。新書版で紙幅が限られているところで、そこまでの対応を求めるのは酷なのかもしれないが。
- (本書の議論からは離れるが)こちらは読者には「誤読」の自由があると考えているからそう思うのかもしれないが、そもそも「正確さ」がどこまで必要なのかは状況次第で、本書でいうようなレベルまでいらないことも往々にしてあるのではないかという疑問。
- (同じく本書の議論から離れるが)「わかったつもり」にさせてしまう文章の書き手の側の問題は考えなくてもいいのかというところも気になった。