一通り目を通したので感想をメモ。この分野に関心があるなら、目を通しておいて損はないのではないかと感じた。
日本企業が海外子会社等のリスクをどのように管理していくかについて、裁判官経験の後外資系事務所の弁護士に転じられ、その種の事案に対応した経験のある著者が、設例に基づく架空の議論を通じて解説する本、ということになろうか。200頁弱で、対話形式で話が進んで行くこともあり、文章が読みづらいということもなく、通読も容易。
全体の構成は、第1章の総論、第2章の平時対応、第3章の緊急対応(有事対応といってよいだろう)、最後の第4章でケーススタディという形。各節の冒頭に議論の目次が示され、末尾に対話で進められた議論のポイントがまとめられており、内容が記憶に定着しやすい形になっているのは良いし、キーワードが強調されたり、挿絵が所々に入って、読んでいてもメリハリがついているのも良いと感じた。
対話は、学生が含まれるなど、なぜそういうメンバーなのか必ずしもよくわからないメンバー*1ではあるが、自社内に留まらない異なる視点を提示しやすいという意味では有用なのであろう。
ケーススタディも含めて、取り上げられている事例は、ありそうな話が多く、そこに対して提示されるコメントは、いずれも無理難題という感じはなく、頑張れば何とかできそうな範囲に収まっていると感じられ、著者の経験の豊富さを感じさせた。個別の問題点への対応策は、ケースバイケースという側面も多く、明快な答えが示しきれているわけではないが、無理に変な「解決策」を示すというよりも適切なのではないかと感じた。
総じて、リスクは不可避的に生じるもの、出来ることはするとしても、起きたら起きたで、肩の力を抜いて粛々と対応することが重要、完璧をいきなり目指すことなく徐々に改善してゆくことが重要*2、という点の重要性を改めて感じた。特に有事対応となれば気の重い話になりがちなところでは、重要な点と感じる。