勤務先を何度か変え、いろいろな規模の企業も経験したけれど、一応、世間でいうところの法務部長の立ち位置のせいか、最近、業務や施策の持続可能性は重要なのではないかと思うことが多い。
超人的に優秀な特定の人が、仕事の進め方を効率化させて、成果を出すというのは、それはそれで素晴らしいことなのだけど*2、属人化といえるかどうかはさておき、そのご当人以外は簡単になしえないような方法が取られていると、何かの事情で、そのご当人がその業務なり部署から外れた時は*3、その進め方が、残された人たちでは維持できずに、結果的に廃れてしまうことが想定可能という気がする*4。
企業内で法務とかコンプライアンス系の業務のそれなりの割合は、同じことを同じように、一定の水準でやり続けることが必要なのではないかと思うので、そういう仕事の進め方でいいのか、と疑問に思う。
こういうことをいうと、必ず、とりあえずやってみたらいいじゃないか、失敗したら戻せばいいという言説に接することがある。一見するともっともらしく見える。そうでも言わないと物事が前に進まない...ように見える。
しかしながら、ここで重要な問いは、失敗したと判明したら、本当に元に戻せるのか、ということと感じる。個人的な経験では、そういう場合に戻せたためしは実は多くない。超人的な個人の働きで2名分の仕事が1名でできるようになって、1名人が浮いたら、その1名分は他に持って行かれることの方が多いのではないか。後で1名分必要になったときに、取り返せるのか、というと直ちには難しいことが多いような気がする。結果的に失敗が判明しても、サービス水準が戻せないままになりかねない。一時的に80点になっても、50点になってそこから戻せないならずっと60点が永続的に続く方が、長い目で見ればいい、という見方もあり得るのではなかろうか。常にそうだとは言わないとしても。
どういう施策であれ、最初から、持続可能な、特定個人に依存しない形での効率化を考える必要があると考える*5。今の勤務先の部署において、配属される人間の「最低限」の能力と人数*6で維持できるやり方は何か、という視点から考えることが必要な気がしている*7。
*1:言うまでもないことではあるが、こちらの経験からくる体感に基づくもので、こちらの経験や視野の狭さに基づく限界もあるため、異論などがあり得るのはいうまでもない。そういうものは誰についてもあるので、その辺を気にしすぎて何かを言わないというのは適切とは思われない。
*2:そのこと自体をとやかく言うつもりもないし、どういう立場であれ、そういうことはすべきでもないと考える。
*3:そこまでいかずともその方が体調不良などで一定期間稼働できないような事態も想定可能だろう。
*4:詳細は書けないものの、実際にそれに類する体験をしていることも付言しておく。
*5:もっとも、特定個人、というところは、特定サービス、と置き換えても同様の議論は成り立ちうるだろう。ネット上の特定のサービスが諸々の不都合で使えず仕事にならない、というお嘆きを見ると、リスク管理は大丈夫なのかという気がする。
*7:先日のエントリに前後して、NDAを切り口にその後の案件の情報を取るというやり方は非効率ではないかという指摘にも接した。それはその通りだろうと思う反面。その種の手法は属人化の危険があり、常時安定的にできるかというと疑義を覚えるところ。本エントリのような視点からすれば、NDAの契約審査に回ってくるという蓋然性が高いのであれば、その時点でその先を確認するという発想は、相対的に誰にでもやりやすいものなのではないか、と考える。