某所で紹介されてていたのに接して入手して、一通り目を通したので感想をメモ。法律英語や法律用語の翻訳に関係するのであれば目を通しておいて損のない一冊だと思う。
著者は、英米法専攻で東大法学部の修士課程を出て、USのLLMも修了の上、現在は大手渉外系事務所のパラリーガルで翻訳に従事しているとのこと。本書には明示がないが、著者の親御さんは、こちらが勝手に「ハーレム教授」とあだ名を奉っていた、元三井物産の山本孝夫教授(元明治大)のようだ*1。
弁護士事務所で翻訳の経験を積まれる中で得られた知見をまとめられたのが本書のようだ。自費出版のような形なので、装丁とかはそれなり。
本文の前半は特徴ある法律英語についてのコラムが100ちょっと。こちらでも知ってるような、この分野では極めて基礎的な内容もあれば、なるほどと思うような内容もあって、興味深いのだが、コラムの書きぶりが、結論だけぶつ切りになっている感じで、端的であるのは有用だとは思うが、もっと書くべき内容がご自身の中にあるのではないかと思われる分、何だかもったいない気がする。相応に経験を積んだ編集者がついてコーディネートをすればもっと充実した内容になったのではないかと思う。
後半は英文契約書全体や各条項についての解説。こちらも解説が端的で簡潔だけど*2、もっと説明する内容はお持ちだろうと思う。
最後にエッセイがいくつかあって、弁護士と翻訳者との翻訳に対する姿勢の際は、言われてみると確かにそうかもしれないと思いつつ拝読した。
法律英語の書籍については、一定の需要があるものの、先のハーレム教授も含め、ビッグネームというべき著者の方々が、かなりご年齢が上になられたので、そろそろ世代交代の時期なのかもしれない。そういうところで、著者のような、ビッグネームの下の世代の書き手が出てきたのは良いことではないかと思う。できれば、相応の編集体制の下で、必要に応じて弁護士の手も借りたうえで、より充実した内容の書籍を出していってほしいと思う。