移り身のたやすさについて

何のことやら。呟いたことを基にメモ。

 

インハウスと外の弁護士という、「いつもの」比較について、大要、インハウスは(副業が認められていない場合には)勤務先1社に拘束されるので*1リスクがある、という趣旨の言説に接した*2

 

勤務先1社以外に自分の生計の原資がなく、勤務先との相性が悪い場合には、金銭的にも精神的にも「逃げ場」がないということになりかねず、その限りでは、納得できる部分のある見方だと思う。

 

ただ、そういうレベルの比較をするのであれば、比較すべきは、インハウスの転職の容易さや、他方で事務所の弁護士が、クライアントを「切る」難しさも比較の俎上に載せるべきではないのかという気もする。インハウスは、「労働者」としての保護を受けやすいだろうし、時間と手間を一定程度かければ、企業からの離脱はそれほど難しいものではないし、その点の予測可能性は相応に担保されていると思われる。これらの利点は、自営業者の事務所の弁護士にはないのが通常だろう。

 

僕自身は小さな事務所でイソ弁を短い期間した経験しかないので、うかつなことは言えないが、わがままな太い客を「切れない」不自由さを事務所の先生のが嘆くのも接すので、そういうものも勘案しないと比較として十分ではないのではないかと感じる。

 

インハウスの難しさは寧ろ、その企業内での企業内法務の職種での上の方のポジションの少なさの問題の方ではないか。法務系(コンプライアンスとかが別にある場合のそういう部署も含め)の上のポジションがないときに、それ以外の系統(ちかいところでは総務とかだろうか)の上のポジションへの異動も難しいだろう。ここでは、おそらく資格があることが、人事及び異動先にとって、異動をためらう理由になる可能性もあるかもしれない。本人が資格に固執する可能性を考えればそう考えることは不思議ではない。もちろん、外に出ればよいのだろうが、特に一定より上になると、希望に沿うポジションがすぐに見つかる保証はないだろう。

 

こういうことを考えると、比較というのは、言うほど簡単ではないということを感じるところである。

 

*1:生殺与奪の権利迄奪われているかどうかはさておき...。

*2:当該言説の主を批判する意図ではないのでリンクなどはしないでおく。