わかれうたの歌い方

何のことやら。一つの実例としてメモ。

 

5社目の時に、約20年付き合いのあった顧問弁護士の先生との契約を解消する機会があったので、その時のことをメモしておく*1

 

企業内法務での「難題」の一つに、長年お付き合いのあるシニアな顧問弁護士との関係解消という話があるように思う。そうそう出てくる話ではない反面で、でも、どこかでは出てくる蓋然性は相応にあるが、付き合いが長いと自社内の各所との関係性も構築され、企業内法務管理職が、関係を「切る」ことを考えても、そうした関係性が、そういう行為の妨げになることもあるため、「難題」と感じる。初職のところでも、その種の対応に当時の上司が苦慮しているのを垣間見たことがある。

 

5社目のとき、入社直後に、そういうシニアな先生(以下、A先生とする)との契約を見直してほしい、という依頼が上の方から来た。詳細は書くのがはばかられるが、「こ、これは...」と思うことが複数あった。把握したこれまでの経緯からすれば、その種の依頼が来るのもやむを得ないのだろうと判断して検討を開始した。

 

上からは、とりあえず総会指導だけはできるだけ早く変えてほしいという話だった。その当時でも株主にアクティビストも相応にいる状況だったので、その辺りの対応もできそうな先生で、年代的にこちらと近い年代の先生を何人か頭に浮かべた。あまり親しい先生だとこちらもやりにくいので、ほどほどの距離感の先生で、一人事務所でなくて*2、報酬面で柔軟そうな独立したて位の先生...というと、結果的にある事務所が候補になった(以下その先生をB先生とする)。直属の上司、管理系の取締役にはB先生の略歴などを示して、依頼することについて承認は得るは出るものの、実際の依頼は1年待てと言われる。長らく懸案となっていた案件があり、前記の承認を得た頃に終結したが、その件はA先生に依頼していたので、その件についての質問が次の株主総会で出るかもしれないから、その総会まではA先生に指導してもらい、その翌年の総会指導からB先生に依頼をする形になるようにしてほしいとのことだった。

 

そこで、しばらく待ち(その間もこちらからはA先生に依頼したのは総会対応だけだった)、その年の総会(懸念するような質問はなかった。)が終わったあたりで、B先生との顧問契約を締結する事とした。その際には社長まで話を通した。特に異論は出なかった。しばらくは両先生との契約は並行させつつも、実際はA先生には案件を総会対応以外依頼せず、結果的に「干す」形になった。その点は直属の上司と管理部門担当取締役迄は了解を得た。A先生との契約解除については難色を示すシニア層も社内にはいたが、A先生との契約に影響が出る形ではないので文句は出ないだろうと考えた。

 

そうして、何か相談するときはB先生(その下のアソの方も含む)にお願いする形を取った。その後、次の総会については、A先生に対して、弁護士の専門分化も進む中で、アクティビスト対応なども必要なので、その辺りに特化した先生に総会指導は切り替えたい旨仁義を切って、B先生にお願いすることに了承を得て*3、B先生に依頼をし、ご指導をいただいた。

 

そこからさらにしばらくたち、秋から冬にかけてのころ、A先生に法務から依頼をしなくなってから、2年近くたったこと、および、経費削減策の必要性も生じたことから、最後のステップに移ることにした。A先生との契約は毎年4月から翌年3月までの1年単位の自動更新となっていたので、年末に、翌年3月末での契約解消の申し入れをしに行くことにした。B先生の相談実績も相応にあり、B先生に会社の上層部にも直接話をしてもらう機会も作ることができていた。反面でA先生に相談もしていなかったので、この時点でA先生との契約解除について、社内で一定範囲で説明をしたが、難色が示されることはなかった。

 

会社全体で見ればそれなりに付き合いのあるA先生でもあり、申し入れの内容からすれば、ある程度実態を認識している人間が行くのが良いだろうと考えて、僕と直属の上司がA先生の事務所に行くという形を取り、アポイントを11月下旬に入れた。ほどなく返事が来て、12月上旬のある日にA先生の事務所に伺うアポイントが入った。

 

ところが、12月に入って、A先生からメールが来た。見ると、年内で顧問を辞任したい旨書かれていた。ご年齢・ご自身の状況もあり、こちらの企業の役に立てていないことは自覚しているので、とのことだった。その後こちらの本社に来られて、最後に社長その他にも挨拶をしたうえで、契約は終了と相成った。もっと揉めるかと思ったが、比較的円滑に契約関係の終了にこぎつけることができた。

 

要するに、相談を減らしていき、ある意味で「日干し」みたいな状況を一定程度続けたうえで、年末にことさらに複数名で事務所まで行く、といういつもと違う行為をしたところから「悟って」いただくことができたということなのだろう。時間をかけて実績を「置く」形にしたことがのが効いたのかもしれないし、インハウスのこちらがいるということもある程度は寄与したのかもしれない。いずれにしても、A先生の出処進退の潔さそれ自体は敬服に値すると感じた。

 

・・・・ただ、自分が50代になると、「切る」側だけを考えるのではなく、自分が下の世代に「切られる」可能性も考えざるを得ない。客商売を長らく続けるのは簡単な事ではないということも改めて感じたのだった。以て瞑すべし。

*1:リアルタイムでメモをしたが、内容に鑑みて、公開まではしばらく時間を置いた。なお、匿名性の確保の観点から、一部捨象した事実がある。

*2:コロナ禍がまだ続いていたので、総会当日に指導に来てもらえなくなるリスクを避ける意味では、一人事務所でない方がいいだろうという判断だった。

*3:A先生の心証を害さないように、A先生と懇意なシニア層の方と共に事務所を訪問して、ご説明したところ、同先生からは、これからはdtk先生が仕切られるのでしょうから、それに従います、というコメントがあった。