映画「Winny」

こちらの映画を見たので感想をメモ。予想していたのとは異なるところがあったけど良い作品だったと思う。

(以下一部ネタバレを含むので、その点ご留意ください。)

 

取り上げられているWinny事件については、リアルタイムではほとんど記憶がない。それほど技術に詳しいわけではないので、よくわからないソフトだなという程度の認識しか、当時は持っていなかったはず。その後、この事件が終わってから、壇先生の書かれた本件についてのブログのエントリや、その内容に基づく小説は、拝読していた。そういう状況下で、映画の公式サイトで「不当逮捕から無罪を勝ち取った7年の道のり」という文句があるのを見たので、裁判プロセスを相応に追いかける形で物語が展開されると思っていた。最高裁では弁論があったわけではないとしても、高裁でのやり取りはあったので、その辺りも出てきたうえで、最後の結論にたどり着くのかと思っていた。しかしながら、この映画では、第1審の有罪判決のあと、間が飛んで、裁判後の博士の葬儀の場面になってしまっていた。「7年の道のり」の語り方としてそれでいいのか、高裁での審理過程での逆転劇について一切明示的に語られないで良いのか、という点は、正直疑問が残った。

 

ただ、こういう感じ方は、こちらが、まがりなりにも法曹だからかもしれない。1審までの過程を丁寧に追いかけたことや、並行して、別の事件についての描写も織り込まれたこともあって、結構長くなっていたから、描きたい箇所が描けていたのであれば、こういう描き方もありうるのだろう。別事件については、関連性が薄い気がしたのだが、出る杭が打たれすぎないように、というメッセージ性があって織り込まれたのではないかと思うし、それはそれで意味があるとも思うが、見る人によって好みが分かれそうな気がした。個人的には、それよりは、高裁での話を入れた方がよかったのではないかと感じた。その方が1審判決の不当性が示せて、博士の名誉回復には有用なのではないかと感じたのだが...。

 

役者さんたちについては、まずは、弁護士さんたちを演じた俳優さんたちが印象的だった。特に、壇先生役の三浦さんについては、こちらの世代にとってはどうしてもご両親のことが脳裏をよぎって、そういう目で見るとご両親それぞれに似ているように感じられたし、壇先生の熱意を再現されている感じがした。また、秋田先生役の吹越さんは、尋問でやらかした若手弁護士の諭し方が、実にベテランの弁護士っぽいと感じた。加えて博士役の東出さんは、技術ヲタクの博士の人柄をうまく演じられていたと思う*1

 

映画はドキュメンタリー系しか見ないので、ドラマ仕立てのものはあまり見ないのだが、この映画は、なんのかんの言ってもよいと感じた。こちらの読者諸兄におかれても、機会があればご覧いただければと思う。

 

最後にパンフレットの表紙と裏表紙の写真を貼っておく。

 

追記)

この映画に関連するエントリなどをいくつかご紹介。

秋田弁護士の事務所の先生のエントリ。

shin-yu-lawoffice.blog

 

出演された方々の対談

natalie.mu

 

*1:それと傍聴人で阿曽山大噴火氏が出ていたのはさすがに気づいたが、壇先生がおられたのは気づかなかった。無念。