銀ぶら百年 / 泉 麻人 (著)

図書館で借りて目を通したので感想をメモ。銀座に関心があれば目を通しておいてよい一冊。

 

銀座について書かれた本というと、以前目を通した本で、本書の著者と年代が近い故坪内祐三さんが書かれた「新・旧銀座八丁 東と西」のことが思い出された。両者をあえて比較してみると、本書は、坪内さんの本よりは、著者の好奇心の赴くままに書かれいている感じだし*1、著者自身が執筆のために関係者などへの取材や実体験*2をして、その様子の写真も掲載されるなどしており、肌合いというかスタンスが異っていると感じた。あえて対比するなら行動派と書斎派*3とでもいう感じだろうか。とはいえ、両著者とも、幼少期からこの地域に接点があり、その頃の記憶を織り交ぜつつ、街の歴史などを語っている。銀座のように歴史のある街だと、きちんと資料が残っているのが流石、というべきだろうし、語られる歴史も興味深かった。

 

両著者より年代的に1周り下くらいのこちらにとっては、銀座はいまなお敷居が高く、特に用事がないと行かないところのままなので、出てくる店なども接点のあるところは、伊東屋教文館、山野楽器、三笠会館など、限られているし、いずれについてもそれほどの濃い付き合いがあるわけではない*4。そういう意味で、幼少期から接点があって、街の変遷も見る機会があった両著者のことは単純にうらやましく感じる。

 

本書では、著者の意向もあって、最近書かれた内容でも、コロナウイルス禍の影響については、あまり触れられていない。ようやく状況は落ち着く方向に向かっているようにも見えるが*5、一連の騒ぎの後で、今後あの街がどう変わっていくか、個人的には気になる。画一化して埋没することなく、歴史を積み重ねてほしいと願うばかり。

*1:有名店でも触れられていないところも相応にある。機会があれば、増補してもらいたいとも考えるが、どうだろうか...。

*2:個人的には名刺を作られていたのが印象的だった。こちらもやってみたい気もするが、僕の場合は名刺に見合う使いみちがなさそうな気がする...。

*3:坪内さんの場合は、手元の資料の情報量が違うという感じなのでこういう印象がある。文学畑の坪内さんと、広告宣伝畑の泉さんというバックグラウンドの差異もあるのかもしれないが...。

*4:あえて言うなら、三笠会館については、司法試験に合格した後に、某ろじゃあ師匠をはじめとする諸先輩にお祝いをしていただいたときのことが強く印象に残っている程度。

*5:そう断言してよいのかはまだ不透明な気がするが。