一通り目を通したので感想をメモ。さしあたり、人文系の調べ物をする予定は特にないが、TL上で見ていて、「この本は読まないと...。」となぜか思ったので、本屋で購入してみた。人文系の調べ物をする可能性があるなら、手元に置いておいて損のない一冊。
国会図書館でレファレンス・サービスに従事していた著者が、人文系の調べ物の技術を公開するもの*1、というのがこの本のざっくりした紹介となろう。TL上で見たのもそう言う感じの紹介だった。
直近の時点で、主にインターネット上でできる調べ物のノウハウについて、どこまでのことができるのか、できないのかを、実例を使って示してくれていて、なるほどと思いながら読み終わった。細かいチップスとかは、思いもよらないものが多く、こういう本が手元にあると参考になる場面があるだろうということは想像に難くない。そういう意味で、調べ物をする可能性があるのであれば、手元に置いて損はないと思う。
印象に残った点などを五月雨式にいくつかメモしてみる。
- インターネットのサイトのURLがあまり書かれていないのが印象的。いちいちブラウザで入力しないだろうという指摘に納得。
- 日本語ドキュバース(文献世界)の三区分(前近代、戦前、戦後)と文献残存率の呼応、前近代の方が戦前より答えが出ることが多い理由というあたりは、読んでいて凄く面白く感じた。
- 言説空間の情報化がインターネット以前からどのように進んでいて、今どういう状況にあるか、そして、今後どのように進む可能性があるかという点のコメントも面白かった。google booksについて、その果たした役割や能力の限界に関するの記載も興味深かった。
- リンク集をNDCベースにしないと、作り手の世界観が反映され、作り手から遠い世界が「その他」の中でごっちゃになるという指摘も、なるほどと思ったところ。
- データベースを本来の用途以外にどういう用途で使い得るかという検討も、いかにもプロの技、という感じがして、興味深かった。
著者によると、本書で触れられていないチップスはまだあるようだし、日本語の言説空間の情報化もまだまだ進行するようなので、それらも踏まえて、何年か経ったところで、本書の改訂版が出ることを期待したい*2。