図書館で借りて拝読したので感想をメモ*1。
本書のカバーには次のように書かれている。
父は他界
弟はダウン症
母は車いすユーザー、からのコロナ禍に生死をさまよう大手術
間におじいちゃんの葬式が挟まって
ついには、おばあちゃんに異変が
ーー残された長女(作家)にすべてのタスクは託された
ここに書かれているような状況下で、著者に、様々な事態が降りかかる。なかなか想像できないような類の事態も含まれる。「もうあかんわ」としか言いようがないことにもなる。それでも、日々は続いていく。著者は、笑いのめす方向で、そうした日々を記録していく。他の人が、著者について「ユーモアとチャーミング」と評するくだりが出てくるが、本書を読むと、確かにその通りと思う。文章にも独特のグルーブ感も感じられて、ついつい読んでしまう(一気に読んでしまうのももったいなくも思えたので、少しづつ拝読したのだけど。)。
もちろん、日記になった時期であっても書けないようなことも多かっただろうけど*2、それでもここまで書けるのは、凄いと思う。僕ならできないと思う。読者がいて、その読者に向かって書き続けることで、「もうあかんわ」としか言えない日々でもなのとか乗り切れた*3、ということもあるのだろうけど、それでもなお、そう思う。色々辛いことというのは、それなりの年月生きていると、一定以上の確率で遭遇するように思うが、そういう事態に遭遇した場合には、こういう形でのやり過ごし方もあるのか、とは思うが、実名表記とかはマネするのは、ためらうものがあるし*4、仮に、やろうと思えばできる状態であったとしても、ここまで「読ませる」形で書くのは、そう簡単なことではなく、誰でもできることではない。自分の中で咀嚼を十分にせずに、迂闊に感情を垂れ流すだけになると、本人にとってやり過ごす助けになれば意味があるとしても、他人にとっては単に「痛い」だけの日々の羅列になって、読むに堪えないものが出来上がるように思われる。やはり著者の人となり、能力があってのことなのだろうと思う。