最近のパラ見:会社法百選を比べてみるなど

全部読むのは無理なので、パラ見してみたのをエントリにしてみるなど。何かしないとホントに積読になりかねないので。

 

会社法判例百選の改訂があり、第4版が出た。百選は買い続けるという方針もあって(会社法については業務上有用なのでそれがなくても買うけど)、買っては見たが、前の版ではあった、旧版との収録事件の差異が載っていない(第3版では第2版との収録判例等の差異についての言及があったのに...)。仕方がないので、収録判例索引だけを見て、異同を拾ってみた。精度は不明・無保証だがメモしておく。個人的にはものすごく面倒臭かった*1

 

大審院最高裁の判決・決定

  • 削除されたもの:
    旧13事件(最大判S45.7.15 )
    旧42事件(最一小判S53.7.10)
    旧4事件(最二小判H17.7.15)
  • 執筆者が変更されたもの:
    旧66事件・新63事件(最二小判S44.3.28)
    旧104事件・新102事件(最一小決S44.10.16)
    旧40事件・新38事件(最一小判S46.3.18)
    旧18・新16事件(最二小判S48.6.15)
    旧44事件・新42事件(最一小判S57.1.21)
    旧82事件・新79事件(最三小判S61.2.18)
    旧81事件・新77事件(最一小判S62.1.22)
    旧72事件、新68事件(最一小判S62.4.16)
    旧21事件・新19事件(最一小判H5.9.9)
    旧101事件・新99事件(最一小判H5.12.16)
    旧102事件、新100事件(最一小判H6.7.14)
    旧49事件・新47事件(最二小判H12.7.7)
    旧96事件・新94事件(最三小決H16.8.30)
    旧51事件・新49事件(最二小判H20.1.28)
    旧17事件・新15事件(最三小決H22.12.7)
  • Appendixに移されたもの(いずれも同時に執筆者も変更されている):
    旧26事件・新A5事件(最一小判S60.3.7)
    旧62事件・新A23事件(最二小判H4.12.18)
    旧69事件・新A25事件(最一小決H13.1.30)
  • 新規掲載されたもの
    新A17事件(最二小判H28.1.22)
    新35事件(最二小判H28.3.4)
    新A36事件(最一小判H28.6.2)
    新41事件(最三小決H29.2.21)
    新83事件(最二小決H29.8.30)
    新90事件(最三小決H29.12.19)
    新A2事件(最二小決H31.1.23)
    新78事件(最三小判R1.12.24)
    新A14事件(最一小判R2.9.3)
    新A35事件(最三小判R3.1.26)

 

高裁の判決・決定

  • 削除されたもの:
    旧A22事件(東京高判H17.1.18)
    旧31事件(東京高決H24.5.31)
    旧A36事件(東京高判H24.6.20)
    旧A20事件(東京高判H26.4.24)
    旧A3事件(福岡高判H26.6.27)
  • 新規掲載されたもの:
    新28事件(東京高判H27.5.19)
    新A33事件(大阪高判H29.4.27)
    新A41事件(東京高決H29.7.19)
    新A34事件(東京高判R1.7.17)
    新A9事件(東京高判R1.10.17)

地裁の判決・決定

  • 削除されたもの:
    旧95事件(東京地判H1.7.18)
    旧A32事件(東京地決H19.11.12)
    旧92事件(名古屋地判H19.11.21)
    旧A11事件(東京地決H20.12.3)
    旧A24事件(東京地判H21.2.24)
    旧A28事件(東京地判H24.9.11)
    旧A34事件(東京地決定H25.7.31)
  • 執筆者が変更されたもの:
    旧55事件、新53事件(東京地判S56.3.26)
  • 新規掲載されたもの:
    新A16事件(東京地判H27.6.29)
    新93事件(東京地判H28.2.1)

 

執筆者の変更は、執筆者がシニアになられたので世代交代という意味があるのだろうと思うけど、それ以外の理由があるのかどうかは知らない(なんとなく知らないほうがいいような気もする)。

 

前の版が2016年(H28年)に出たのに、2015年とかの裁判例の新規掲載があるのは、判決文が出るまでのタイムラグなんだろう。

 

…と収録判例索引だけ見ていてもつまらないので、2つほど事件を眺めてみる。

執筆者の変わったもののうち、新94事件(旧96事件:最三小決H16.8.30)は、新版では東北大の森田果先生が解説を担当されている。比べて読むと、森田先生の解説の方が、表題となっている「企業買収の基本合意書中の協議禁止条項の効力」により焦点をあてて解説がなされていて、その部分の解説の解像度が上がっていると感じた(他方で、保全の必要性についての判断については、殆ど何も言っていない形になっているが)。

 

新規掲載のものの中で、新35事件(最二小判H28.3.4)は、議案を否決する株主総会決議の取り消しを不適法とするもの。解説の中で、否決判決が決議取消の制度の対象とならないことは、瑕疵ある否決判決に、決議取消の訴えの制度の制約(提訴期間等)が及ばず、無効主張の一般原則が妥当して、瑕疵ある否決判決により法律上の不利益を受ける者の救済手段が広がるという指摘は、個人的には興味深く感じた。手段が広がるのだろうけど、手段の使いやすさ(正直、ここは分からないけど)が悪ければ広がる意味がどこにあるのだろうという気もする訳で...。

 

 

 

 

 

*1:某二次妻・無双御大の江頭差分(通称江差追分)の偉大さが身に染みた。もう二度としたくない...。