ジュリスト2021年5月号

例によって、呟いたことを元に箇条書きでメモ。

  • 会社法セミナーから見る。監査等委員会設置会社について、色々整理が不十分なところが多いなというのが、2回読んでの感想。他国の例も参考にしづらい制度だからそうなっても仕方ないのかもしれないけど。ある程度実例が出てきたところで制度の手直しの議論をするべき時期にあるのかもしれない。監査等委員会への批判に対する対応も興味深かったが、これらについては、こちらの知見が少なすぎてコメントのしようがないけど、立ち位置によっていろいろな見方があると感じた。
  • 特集。森田先生の文章は全体の概要及び趣旨説明というところ。
    第1論文は事業者的消費者の問題の検討だけど、検討の手前の部分までのところに紙幅を食いすぎているのか、検討部分が抽象論で終わっていて、「で、具体的にどうしたいの?」という疑問が残った。
    第2論文は、債権法改正で入れられた定型約款規定について批判的と感じたけど、政治的妥協の産物(この辺りは某たかし君(仮名)の「薄い本」にも記載があった)のようなので、やむを得ないのだろうと感じた。消費者契約法10条との棲み分けは、今後に期待なんだろう。
    第3論文は消契法と特商法との関係の複雑さが興味深い。個人的には将来的には両者は統合されることになるのではないかと感じた。
    第4論文は、公益性を消費者裁判手続特例法の保護法益と正面から認めることで、当該法律の制度改革を測ろうということのようだけど、公益性を正面から認めたとしても、主張されていることをすべて認め得るのかは疑問が残った。定性的な議論で定量的な議論が十分詰まっているか疑問。
    第5論文は、説明を要する事項を丁寧に説明していたら尻切れトンボになった感がある。域外適用の話とかがないのは事案の性質に鑑みると残念な限り。
    特集は、B2Cの話に絡むことのないこちらにとっては、学ぶところが多かったというか、日常業務との関係で縁遠い分野の不勉強を実感する(消費者法は勉強しておけというのが某ろじゃあ師匠の教えではあるのだが(汗))。
  • 海外法律情報。韓国の高位公職者犯罪捜査処の発足の件は、本邦の首相の長男の件とかを考えると、同様の対応が必要なのではないかと痛感する。ロシアのSNS等の規制は、国家権力対SNSプラットフォームという図式が興味深いがどうなるか。
  • 新法の要点は労働共同組合法。そういう法律ができたこと自体知らなかった。労働者としての保護を及ぼす範囲を広げるというのは悪いことではないのだろうとは思う。
  • 判例速報。会社法のものは弥永先生の批判に納得。決定要旨のIの部分は文理解釈に固執しすぎてないかという気もする。
    労働法のものは、争い方の難しい事件だったのではないかと推測。ともあれ、口外禁止条項付き審判の相当性が否定された点は重要と思われる。
    独禁法のプリンタカートリッジの件は、まあ、納得というところ。プリンタ業者からすれば納得しがたいかもしれないけど。
    知財は防護商標の要件充足の判断基準が興味深い。
    租税は話が複雑すぎるように見えて正直読んでいて良くわからず(汗)。
  • 判例研究。押し紙独禁法違反に該当して損害賠償請求が認められたものは、新聞業指定の適用事例を見たことがなかった(汗)うえ、未だにこういう慣行があるというのを知る意味でも興味深かった。
    総会での株主・代理人弁護士の出席拒絶と決議取消のものは、小規模会社で発行会社・経営陣が株主・代理人の属性事情を知っているという事実関係ではそりゃこうなるよね、という印象だった。
    感染症拡大を契機とした株主総会開始時刻・場所の変更の可否については、こちらも事実関係からすれば決定はそうなるよねと思いつつも、評釈の中で検討の仕方の問題点の指摘にも納得。確かに取締役会決議の省力の正当化の問題と見る方が適切だと思った。
    運送品損傷時期の推定及び運送人の運送品に対する注意義務については、海商法を勉強したことがないので、こういう形で問題が生じるのか、というところからして興味深かった(汗)。
    職場でのヘイトスピーチの件は、H25にこういうことがまだあったのかと事実関係に驚くが、判旨はそうなるよねというところ。ただ、民法709条・会社法350条に基づいて請求が認容されていて、労契法5条に基づくものではないことは留意が必要なのかもしれない。
    定年延長拒否の件は、裁量権の逸脱濫用に関する判旨に対する評釈が興味深かった。結論としてしっかり契約に規定することの重要性を強調するのは、まあ、当然なのだろう(それが万能かどうかはさておき、必要なことではあろう)。
    租税法の件は、債務確定主義を知らなかったけど、そこからすれば、そうなるのかなという感じ(汗)。
  • 小法廷の時の判例。時の判例はなぜか後ろから読む(一番最初の大法廷のものが長いからだが)。
    刑事のものは、宅配ボックスを利用した現金送付型特殊詐欺の事案での受け子類似の役割を果たしたものの故意及び共謀の認定についての判断についてのもの。宅配ボックスの仕組みと事実関係からすればなるほどと思った。
    もう一つは、税金関係だけど、結局は時効の中断事由該当性の問題。簡易な手続きでできる通知等により時効中断効果を生じさせないようにする理由付けが興味深い。もっともごね得になってないかという疑問は残る。
  • 大法廷の時の判例普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰と司法審査の件は、判決の射程についての分析、特に地方議会の議員への懲罰に対して射程が及ぶかについての慎重な検討が興味深かった。
    参議院定数配分規定違憲訴訟は、現状の定数配分の仕組みそのものを見直さないと状況の劇的な改善は難しいのにそれをしていない立法府に裁判所がどこまで我慢できるか、という感じになっていると感じた。