移動中に目を通したので簡単に感想をメモ。手元にあれば有用なこともあるかなというところ。
全体が150頁と薄めなうえ、そのうち40頁ちょっとは債権法改正についての解説(これはこれで有用なこともあるだろう)なので、業務委託契約書そのものについての解説は100頁程度しかない。業務委託契約は、対象業務の内容次第でいかようにでもなりかねない融通無碍なところがあるので、その程度の分量で語り得ることはたかが知れている。とはいうものの、書かれている事項についての解説は丁寧で、裁判例も拾っていて、条項の修正案も示していて、これらが見やすく項目ごとにまとめられているので、この種の契約書を初めて見る人が、大所を掴むという意味では良いのかもしれない。
いくつか気になった点・印象に残った点をメモしておく。
- 末尾に準委任型・請負型それぞれの雛型が付いているものの、雛型で一定の手当てをしている項目について、解説がないところがあって、雛型だけ見て、意図するところが掴めればさておき、そうでないと、この一冊だけで業務委託契約の内容検討をしようとするのは困難に思われた。
- 個人的には業務委託契約、特に準委任型のものは、業務委託の実態が事後的にわかりづらくなることがあって、税務調査時に支払いに見合う業務があったのか問題となったという話を聴いたことが有るので*1、成果物(報告書など)について明確に規定することに留意(実際に当該成果物を受領して内容を精査することも重要だが)すべきと考えるのだが、そのあたりについて言及があった方が良かったのではないかと感じた。
- 業務遂行の過程で生じた知財権の扱いも、トラブルの種になりかねないところで、それ相応の解説を要するところと考えるのだが、雛型では一定の手当てがあるのに、解説が十分されていない感じで、その点は言葉足らずな印象が残った。
- 「検収」についての解説も*2、「検収」が諸々の法的効果の起点となる旨の解説があるものの、「検収」が遅れた際に生じる弊害に対する手当について言及がなく、一定期間内になされないと当該期間の経過をもって「検収」完了とみなすという規定が雛型にあるだけなので、解説でもその点は触れてほしかった。
- 印紙税との関係では、注文書に対して請書を出すと課税される点について、課税を回避する方法への言及があるのも印象的*3。ちょっと調べればわかることではあるが、正面切って書いてある書籍を見たことがなかったので。