ファンベース (ちくま新書) / 佐藤 尚之 (著)

さとなおさんというと、個人的には個人でグルメサイトを運営している人、という印象(NYで店に困ったときにはお世話になった)なのだが、最近はnoteに移住された模様。で、本業は広告業界の人(元電通)で、その本業に関する本を初めて読んだ。出たときには特に買う気にはならなかったが、先日近所の古本屋(年内で閉店)で見つけて買ってみたので目を通した次第。

密林に出ていたが、概要は次のとおり(改行位置を変えた)。過不足のない紹介だと思う。

人口急減やウルトラ高齢化、超成熟市場、情報過多などで、新規顧客獲得がどんどん困難になっているこの時代。
生活者の消費行動を促すためには「ファンベース」が絶対に必要だ。それは、ファンを大切にし、ファンをベースにして中長期的に売上や価値を上げていく考え方であり、その重要性と効果的な運用の方法を、豊富なデータや事例を挙げて具体的に紹介する。
『明日のプランニング』に続く、さとなおの最新マーケティングの必読書。 

章ごとにポイントが最初に示されてから、議論が始まり、語り口調で、誰でも認識可能な分かりやすい実例を示しながら、丁寧に理屈を説明する形で議論が進むので、僕のようなこの分野の素人でも読むのは苦痛ではなく、なるほどなるほどと思いながら読み終わる。長く売れるづけるためにと提示される提案内容も、出来そうにないことはあまり含まれていない。小さなことの積み上げが最終的には、永続的な売り上げにつながるということもよく理解できる(実際に自分が貫徹できるかは別の問題だが)。

 

読み終わって思うのは、弁護士業界では本書の議論がどこまで妥当するのだろうかというところ。弁護士の事務所のファンって今一つ想像しづらい(例外は某離婚弁護士さんのところの当該事務所の利用経験者のコミュニティくらいか)。企業法務でも個人相手の街弁でも、そういう気がする。

 

やや議論がそれるが、BLJの読者交流会も想起したけど、あれは、意図的にコアな人たちの集まりとすることを避けようとしているように見受けられ、ちょっと狙っているところが違う(それはそれでよくわかるし、その判断は正しいと思う。)気がした。

 

ただ、特に都会で小さな事務所でやっていくのなら、ある程度事務所の性格付けを明確にして、万人受けは狙わないほうがいいんだろうな、とは思った。それが本当かどうかは今のところはわからないが。