網のかけ方

たまには、ちょっとは法務っぽいエントリも…(汗

 

子会社を含めて関係会社も含めて親会社が一括して取引基本契約を締結するけど、子会社などの押印がないのは大丈夫なのかという議論に始まる一連のやり取りを拝見した。確かに、その種の契約の仕方は、こちらも見たことが有る。

 

企業の法人としては別法人だけど、その区別はある意味形式的であって、実質は、企業グループとして一つの法人、みたいな形で一体となって事業活動を展開している、というような状況下だと*1、子会社とか関連会社と親会社とで契約条件が異なるというのは、何だか不合理にも見える。親会社側が子会社とか関連会社を、自社の人事異動のノリで弄っているような状況下だと、外から見てどうなっているのかわかりづらい。そうなると、まとめて親会社で面倒を見てもらって、グループ内については親会社に責任を持ってもらうという形で契約するという発想になったとしても理解できるところ。

 

しかしながら、そういう発想は、これらの企業に対して親会社がきっちりコントロールを効かせているのが前提といえるものの、その前提が確保されている範囲がどこまでなのか、外からは必ずしも明確に見えないということもあり得るし、不採算部門・子会社を切り売りするような話もあると、そうした前提がいつ成り立たなくなるかもわからない。そうした関係が切れたことに気づかない可能性もあるかもしれない。

また、個々の会社名がわからないと、特定の企業に対してピンポイントで何らかのアクションを取りたいとき(情報漏洩に対して、差し止めの仮処分を提起するというのがすぐに思いつくが、それ以外にもあるだろう)に困らないかというところも気になるところ。

 

そういう利害得失を考えると、親会社のみが関連会社を代理して契約締結当事者になるという前提で、契約上の手当てを固く考えるならば、締結時点に別紙に関連会社一覧を添付して、締結時点での一覧の正確性の表明保証、及び、そこから変動が生じることが予見された場合の通知義務・変動に対応した形での契約締結交渉への協力義務など(修正後の一覧が正確になるように努力することを誓約する形になろうか)を課したうえで、それでもなお生じる不測の損害については、補償する旨の条項を入れておく、というような手当の仕方になるのかもしれない。

 

とはいえ、そこまでのことをするのは、やはり費用対効果の面で疑義が残るところなので、そこまでせずとも何らかの形で手を打つことになるのだろうけど。 

*1:最後に勤務した米系企業は、国別に法人は分かれていても実際は一つのチームで動いていたので、そういう例を考えるとあり得るところ。