マトリ 厚労省麻薬取締官 (新潮新書) /瀬戸 晴海 (著)

不調ながらも、新書なら読めるかと思い、近所のブックオフで購入(汗)。自分の身を守る意味でも読んでいて損のない本と感じた。

 マトリ、厚労省麻薬取締官のトップだった著者が、平易な言葉で(小難しい化学の話は最小限にして)、日本の薬物犯罪と捜査の実態(もちろん現在の捜査に支障が出ない範囲で)について解説する本。

 

普段刑事事件を取り扱っていないので、この種の読み物は興味本位で読むわけだけど、薬物事案に対応する諸官庁の分担の意義の解説*1や、薬物の販売が一つの巨大な”産業”化している状況(特に国際化、ネット化が興味深かった)とそこに至るまでの歴史についての解説は、読んでいて素直に面白かった(不謹慎かもしれないが)。

 

少しは法律家の端くれめいたことをいえば、マトリが主に手掛ける6法の適示(これらの法律との関係で彼らは特別司法警察職員とされる)や、クリーンコントロールドデリバリーを用いた捜査の実例は、刑訴で学んだこと(不勉強なので大して学んではいないのだが)を思い出すし、こうした捜査手法の正当化根拠が麻薬特例法に規定があるという指摘は、興味深かったし、危険ドラッグ(その洒落にならなさ加減は戦慄するものがある)の取り締まりのための根拠の作られ方、法令の整備状況と並行して取り締まりが強化されるところも、同様に興味深かった。

 

最後に薬物患者については、最近も色々芸能人の方々が摘発を受けた事例なども見るところだけど、再犯を防ぐには「孤独にさせない」ことが重要と著者が指摘するのは、芸能界での薬物渦を見ると納得できるところだろう。

 

 

*1:ちょっとくらいはポジショントークがあるのかもしれないが、そこはまあ、ご愛敬というところなのだろう