Contracts and COVID-19/Andrew A. Schwartz

英語の復習?モードで読んだのでメモ。@znkさんの呟き*1で目にしたもの。10頁ほどなので、現状のこちらの能力からすればお手頃な分量。

www.stanfordlawreview.org

 

前半では、Impossibilityの議論とその効果として生じるRestitutionの機能について論じたうえで、後半は、これらの特則(という言い方が適切かどうかは自信がないが)としてのForce Majeure条項による救済について論じ、特に後半最後の部分では今回の事態がForce Clause条項のドラフティングに与える影響などについて論じている。

 

個人的には、Force Majeure条項がImpossibilityの理論の特則的な位置にあるという指摘*2は、あまり考えていなかったが、納得するところ*3。言われてみれば納得という感じ。

 

とはいえ、Force Majeure条項自体は厳格に解釈されがちなので*4、この種の事態が再度生じたときにきちんとカバーできるかについては不確実さが残る*5ので、カバーしようとdraftingで頑張りすぎるのではなく、Force Majeure事象の中にPandemicを入れるということは、Pandemicによるリスクの相手方への押し付けにつながる可能性(結果的に価格などの交渉において不利になる危険もある)を考えると、ビジネス面も考えて、Force Majeure条項削除してしまって、Impossibilityの理論に訴えるという発想もあり得るのではないかという指摘は、興味深く感じるところ。draftingも含めた契約締結に至るまでの費用(時間なども含めた意味での)との見合い*6ということなのだろう。個人的には、そこまで割り切る勇気はなかなか持てないが。

 

*1:有益なものをご教示いただき感謝しております。@znkさんのこの文章についてのコメントも参照のこと

*2:原文では”...how a Force Majeure clause alters those background doctrines to give—or withhold—relief to a party whose performance has been thwarted by the pandemic.”とある

*3:日本語の本でこの種の指摘を見た記憶があまりない。平野アメリカ契約法に若干の言及があった程度か。

*4:今回のような事態が通常Force Majeure事由に含まれるAct of Godにあたるかどうかは不明確だし、政府側の動きも、今回の日本での「自粛要請」のように明確な強制力がない形だとgovernmental order等に当たるのかさらに不明確だろう。

*5:カバーされるかどうかは予見可能性では判断されていないという指摘も留意すべきところだろう。冷静に考えれば天災や疫病の発生は歴史上過去に幾度となくあったから、予見がまったく不可能と断言するのは不可能だろう。

*6:追記:それに加えてno dealとなる危険も指摘されている…確かにそうだろう。