この道を行くの?

何だかよくわからない表題*1だが、それはそれとして。呟いたことを基にメモ。

 

NDAの内容の統一という話がTL上にあったので、その点についていくつか感じたことをメモ*2NDAの話ばかりしてるような気がして、何だかなあと思うのだが、元「中の人」として引っ掛かったのも事実なので。なお、以下の内容は、当然かもしれないが、こちらのこれまでの経験に基づくものなので、異論があり得るものであることはご留意いただければ幸甚。

 

まず感じたのは、内容を統一しようという対象のNDAが何を意味しているのだろうかということ。NDAと題する契約書でも、その内実を見ると、単に当事者間でやり取りする秘密情報の取り扱いについて定めるだけではなく、共同研究契約とか共同開発契約というべき内容を含んでいる事例もあり、NDAとだけ言ったのでは、どこまでの内容を含む契約なのか、明らかではない、のではないかというところ。個人的には、(1)秘密情報の定義(例外含む)、(2)秘密情報の特定範囲への漏洩禁止(情報共有の人的範囲の制限)、(3)秘密情報の開示目的以外の使用禁止、あたりを中心とする契約、と理解しているのだが…。

 

上記の点を措くとしても、仮に僕が書いた上記の意味での契約を前提にしたとしても、秘密情報の出し入れに関する契約である以上、出し入れする情報に関する自社での管理体制と整合していない内容のNDAは、契約書の規定と現実の情報管理との間で齟齬を生じさせる危険があり、それゆえに有害にも作用しうると考える。その意味で、情報の管理体制を統一しないとNDAだけ統一することの意味は限定的ではないかと考えるし、他方で、管理体制の統一自体は、情報、特に、技術情報の取り扱い方は、企業の戦略(特に知財戦略)にも関わるところであり、統一しようとしてもできるものとは思われない。そう考えると、冒頭に記載した試みの唱道者が如何なる意図で唱道したのかは定かではないものの、どこまでの意味を持ちうるのかは、個人的には疑問が残る。

 

この点に関して、上記の試みは、NDAについて、単に形式的なものが多いから、その締結過程を効率化するという意味があるのではないかというような趣旨に読める指摘にも接したけど、そもそも、形式的なものが多いというのは、業界とかによるのであって、こちらが経験したメーカーの場合は、形式でないものが相応にある(むしろそちらの方が多いのではないかというのが僕の体感だが)ように見受けられる。この辺りは、論者の立ち位置如何によっても異なるところだろう*3

 

個人的には、そもそも実利のないNDA締結それ自体、避けるべき(一旦約束した以上、後でそれが自社に不利に作用する可能性はゼロにならないので)と考える。そのうえで、効率化をいうのであれば、書面の内容をどうこするよりも、そもそもNDAなしで開示できる情報の範囲を見直した方が良いのではないかと感じるところ*4。書面の内容がどうであれ、書面を交わさないで済む方が、迅速なのは間違いないし、情報の陳腐化のスピードが上がっているのならば、開示にあたってNDA又はその他の契約で保護をすべき範囲も減っているのではないかと感じる。

 

 

 

 

 

*1:一応元ネタがあるのだが…。

*2:具体的な試みのサイトなどへのリンクは貼らないでおく。

*3:この辺りは、企業内にいると、自社の取引上の立ち位置とか力関係を前提にしかものが見えない可能性があって、その点は、企業の外に出てから感じたところではあるのだが…。

*4:この点は、こちらのエントリでメモしたところ