上山浩・若松牧「準委任契約の誤解を解きほぐす-システム開発契約を題材に-」

みみずく先生が紹介されていたのを拝読。著者の事務所のサイトに転載されている論文。

内容についての抄録には次のようにある(改行位置はこちらで編集した)。

 本稿では,準委任について陥りやすい誤解を解きほぐした上で,もし紛争になってしまった場合,契約書の表題通りに当事者が企図していたような契約解釈がなされるのか,プロジェクトを円滑に進め,紛争を防止するために本当に重要なことは何なのかを,システム開発の実務を題材に説明する。 

 準委任とは何か、という法的な意味の解説から始まり、システム開発においては、準委任がいかなる意味を持つのか、システム開発契約に関する訴訟における契約書の意義、ソフトウエア開発契約において法務部門の果たす役割、ということの解説がなされている。システム開発契約の内容を見た経験はないに等しく、システム開発の現場も知らないという状態であっても分かりやすく、基礎的なところから解説がされているので、門外漢と及び腰になる必要はない。

 

準委任か請負かということには一定の差異はあるが(差異をまとめた表がわかりやすい)、訴訟になれば裁判所は実態を見て、契約書の文言に拘らずに判断をすることが考えられるから、実態を見ることが重要、という分析と、ユーザとベンダは双方相手のことはよくわからないのだから(「二重の専門性」という表現が取られている。)、相手任せにせず、双方主体的に開発に関わることが重要、そういう中で法務部門は、全部の案件に同じ密度で関与するのは難しいので、メリハリをつける(ある種のトリアージュか)ことが重要、というあたりが、重要に思われた。僭越ながら、地に足の着いた議論をされているという印象だった。