改訂版 著作権とは何か 文化と創造のゆくえ (集英社新書) / 福井 健策 (著)

10年前に読んだ本の改訂版。間違いなく良著。

新書版で著作権についての本、というと、池村先生の本もあるが、著作権法について概要を一通り押さえるという意味では、池村先生の本の方が叙述の配分の方が良いと思う。本書は、そもそもそういう意図の本ではなく、著作権について、どう考えるか、という視点を提示することに、より重点が置かれているという気がする。そういう記載もあるし。その意味では、本書を読んでから池村先生の本を読むというのも良いのかもしれない(法改正に伴う改訂の時期のずれに伴う不整合があるかもしれない点には注意が必要だけど)。

 

創作者の視点で、どう著作権について考えるか、ということを説くのは改訂前から変わっていない印象。それもあって、条文とかが出てくるのも最小限に留まっている。今回の改訂は法改正に伴う権利保護期間の延長などの改訂のためのようで、加筆箇所も最低限という感じ。なので、取り上げられている事例とかも、15年前のままで、今見ると、やや古く感じるところもある。初版の時の雰囲気をできるだけ壊さずに、それでいて、今の状況に合うものにしようということだと拝察する。この点は好みの分かれるところだろう。

 

著作権というものについて、創作者視点で、著者が、自分の言葉で、条文とかに極力頼らずに一から説明していく様子は、今読むと大変面白く感じた。そういう話の進め方の方が、読者、特に、著作権法についてそれほど接点のない人々にとっては、良いのではないかという気がした。