法学教室2020年4月号

例によって、呟いたことを基に箇条書きで感想をメモ。

  • 特集は、大学に入ろうとする人向けに若手(年齢的に)の研究者・実務家が書くとこうなるのか…というところ。就活とかスタートアップとかデモ参加の話とかが出てくるのは実に今どきな感じがした。
  • 判例セレクト(後ろから読んでいる)は、刑訴で取り上げられていたものが興味深い。解説にある事実関係からすれば、判旨のような判断になることについては、違和感はなかった。
  • 演習は、4月の年度初めらしく、各科目の基礎の基礎みたいなことを解説している科目と、普通に連載の一回としてその種の配慮を見せずに解説をしている科目とに分かれている印象で興味深い。本当に初めて法学に接する人もそうとも限らない人も両方とも読者にいるのだから、どちらもあり得る発想だと思う。
  • 法学用語のトリビアについては、「事業者」の記事末尾の白石教授の指摘が印象に残る。定義したことの使い道から定義を導く思考法なのだろうという気がした。もう片方については…(以下略)。
  • 特集については、時事ネタから各科目の導入につなげようとしているのが読み取れて、興味深いのだけど、民法については、選んだ時事ネタが民法向きとは言い難く、寧ろ憲法向きなような気がしてイマイチな気がした。
  • スポーツと法の記事は、裁量統制をスポーツ仲裁での判断に持ち込む正当化根拠についての説明が興味深かった。
  • 講座のうち、会社法は流石に今まで見聞きしたものとつながりが見えやすいので読みやすいし興味深いが、憲法はその逆で、こちらの不勉強もあって、付いていけていない感じだった。連載の最初にこのテーマというのはすごいかも。民訴の講座は、初回にこの話かという内容で、「知的好奇心を刺激する」という目的がどこまでの範囲で達成されるのか、個人的には疑問。行政法の講座は穏当な行政救済法の序章になっているという印象。民法の講座は、丁寧な説明で個人的には有用だった。契約責任説における415条1項の立証責任の分配についての説明については、この条項は、裁判規範としての側面を考えれば、訴訟の場では常に事後的に行為を評価することになることを考えると、免責事由を事後的な規範的評価と素直に?捉える方が良いのではなかろうかというのが、個人的な印象(印象というだけだが…)。刑法の講座は、共犯の問題の処理の考え方の説明がわかりやすい(が、実際にこれが、試験会場でできるかというとまた別問題なんだよな…と嘆息する)。刑訴の講座は328条の位置づけについて立法過程に遡って解説しているところが興味深かった(ただ、アメリカ法における解説のところは、NYBarの時にやっていたはずなのだが、まったく思い当たらなかった点は、何だか微妙…)。