藪蛇の危険?

時事ネタにはあまり反応しない方針だが、色々思ったので、呟いたことを基に備忘方々メモ*1

 こちらの件について*2。個人的には、かの会社はよほどのことがない限り利用しないようにしているので、対岸の火事を見るという感じなのだが。

通販サイト「楽天市場」で一定額以上購入した利用者への送料を出店者負担で無料にするとした楽天の方針を巡り、同社から相談を受けた公正取引委員会が2019年12月、「独占禁止法違反の恐れがある」と回答していたことが11日、関係者への取材で分かった。

楽天は「法令上の問題はない」として方針を変えていない。公取委は無料化は出店者側に不当な負担を強いる可能性があるとの見方を強めており、10日に独禁法違反(優越的地位の乱用)容疑で同社本社を立ち入り検査した。

疑問に思ったのは、上記の報道からすれば、相談に行ったら「ダメ出し」されたのに強行しようとしていて、揉めているというように、外形的には見えてしまっている点。会社側は「問題はない」というスタンスとのことだが、相談に行っても「完全にシロ」といわれるとは思えない内容なのに、なぜ相談に行ったのか、公式に「ダメ出し」を受けておきながら強行すれば、当局側の心証を害する可能性*3もあるのに、藪蛇になる危険を殊更に冒したのはなんでだろうというところ。

 

法務が、社内を止めるために敢えて「ダメ出し」を取りに行ったという可能性はあるし、それが一番わかりやすいシナリオだろう。ただ、仮にそうだとしても、それで止まる社内だったのかというところも疑問。特に、サラリーマン社長ではなく、一人に権力が集まっている(ように見える)企業で、そのような対応策がどこまでそれが有効なのか、そのあたりがどういう読みだったのかというところも気になった。インハウス、特に上のクラスについては、その状況下だと、下手をすると自身が懲戒を食らう危険があるわけだから、誰かが言えば社内が止まる状態だったのか*4*5というところの読み、それと、自分たちが上を止められるだけの信頼関係を構築できていると信じた読み、の適切さに疑問を覚えた。別に他の事案でも同様に問題が発現する可能性もあると思うわけで。この辺りは、ある種内部統制の限界の話と地続きではないかとも思ったのであった。

 

いずれにしても、サラリーマン企業でないそれなりの大きさの企業のインハウスは、そういう「経営者リスク」を負っているということも実感する。対応が、経験値を積むという形になればよいけど、板挟みの中で体調を悪くするという危険もある*6ので、対応が難しいと感じる*7

 

*1:思いの他TL上で諸先生方からコメントをいただいてしまった。この場を借りてお礼申し上げます。もちろん本エントリの文責は当方のみにあるものです。

*2:個人的にはそもそもかの会社が密林に勝てないのを送料の問題と位置付けている段階からして違うのではないかと感じているのだが…。ビジネスモデルからして異なっているのに、送料のみの問題だけに帰着するとは思えなかったので。

*3:この点については、山口先生は、「今回は、バトルを繰り広げるなかで、公取委とWIN・WINの関係を築きながら(まともに勝負できる相手ではない)GAFAに対抗していく考え(方針)ではないかと推測いたします。」されている。その可能性があることも否定はしないし、会社側の思惑としてはそういう志向性を有している可能性もあると思うけど、公取側がそういう話に乗ってくれるのか、公取側がそういう話に乗ることが諸般の状況から可能なのか、というと疑問が残るように思う。

*4:間違うとインハウスであればクビの危険もある。外の顧問弁護士でも切られる可能性はあるわけだが、経済的依存度が違うはずなので、ダメージはインハウスの方が大きいだろう。

*5:官庁が駄目なら、トップを止められる他のところに、というのが常道で、社外取締役監査役監督官庁のある時にはそこ、というのが考えられるが、かの会社のトップとの関係でそういうところがあったのかはよくわからない。

*6:そうなる予兆を検知した時点で「転進」をはかるべきなのだろう

*7:こういう企業に報酬額だけで安易に入ってしまうとそれはそれで危険なわけで、報酬額を高くすることを唱道する議論にはそういう意味で一定の留保が必要なのではないかと感じざるを得ない。