会社法改正案要綱(2019)

TLで案文その他が出たというのを見つけ、要綱に目を通してみたので、感じたことを、順不同でメモ。もっとも、今までの経緯をまったくフォローできていないので、単なる素人的な感想でしかないのだけど(汗)。

www.moj.go.jp

 

「第*」レベルの見出しを書き出してみると次のとおり。数字はアラビア数字に改めた。

第1 株主総会資料の電子提供制度

第2 株主提案権

第3 取締役の報酬等

第4 補償契約

第5 役員等のために締結される保険契約

第6 業務執行の社外取締役への委託

第7 社外取締役の設置義務

第8 社債の管理

第9 株式交付

第10 責任追及の訴えに係る訴訟における和解

第11 議決権行使書面の閲覧等

第12 会社の登記に関する見直し

第13 取締役等の欠格条項の削除及びこれに伴う規律の整備

第14 施行期日等

 

通してみると、思っていたより改正項目は広範。社外取締役選任義務付けの話だけかと思っていたので(汗)。

 

第7の社外取締役の義務付けについては、公開会社で、大会社の監査役会設置会社で、有価証券報告書提出会社を対象としているものなので、そういうところであれば、既に社外取締役がいるところも多いだろうし、それなりのリソースがが企業統治についても割けるだろうから、大騒ぎにはならないのだろうなと思うところ。

他方で、企業統治との関係で社外取締役選任を義務付けたからと言って、直ちにそのことが何かをもたらすのかどうかは疑義が残るように感じる。選任したとしても、情報の共有を円滑にしないとか、社外取締役が使えるリソースの割り当てを十分にしないとかすれば、社外取締役の機能の余地は変えられると思うから。そのあたりの手当てをどこまでするかというところとセットで見ないと駄目だろうし、そこは実質の問題なので、法律で何かを強制するのは難しいのではないかと感じるところ。

 

第6の社外取締役への業務執行の委託は、利益相反とかの場合に取締役会の決定により認めるというものだけど、この規定に基づき実際に委託がなされるのはかなり限定的な状況下なんだろう。他に適切にできる人がいない状況下で、本来手を下すべきではないと考えられる社外取締役が、自ら手を動かすことを許容するというのは、悪いことではないのだろうけど、業務執行をした結果施当該社外取締役の責任問題が生じたときにどうなるのか、責任限定契約などとの関係はどうなるんだろう、というのが疑問。

 

広い意味での取締役等の責任問題に関するものとしては、第4の補償契約、第5の保険契約(D&O保険の話と理解するが)、それと、第10の代表訴訟での和解が関係してくるように思うが、前2者は、取締役会設置会社では取締役会決議で決定可能なので、取締役間でのなれ合いみたいなのをどこまで防ぐか、というところが重要になるのかもしれない。まあ、取締役会決議事項なので、取締役会議事録には議論の結果などが残ることになるから、何か問題があったときには議事録から情報を取って攻めることになるのかもしれない。

和解の話は、監査役・監査委員・監査等委員(それぞれが設置されている場合に、ということだが)の承諾を必須とするということで、機関の役割分担からすればそうなるんだろうなと思うところ。

 

第3の取締役の報酬については、報酬等の決定方針を取締役会(または株主総会)で決定するというところで、個々の取締役の報酬について個別に決議しないという前提を維持するならそうなるんだろうなと思うところ。前提自体も維持すべきかは疑問があるとしても。

 

総会資料の電子開示については、まあそうなるんだろうし、効率化という意味ではよい話(特に海外機関投資家とかの関係では)なのだろう。

 

株主提案の数の制限は、濫用的な事例を見てしまうと、何らかの歯止めがいるという議論には反対しづらいところという気がする。歯止めの具体的な内容についての妥当性は別途考える余地はあるとしても。

 

株式交付は組織再編で、部分的な株式交換みたいなイメージで理解するんだけど、正直どこまでのご利益のある話か直ちに判断しづらい。

 

社債の話とかは内容自体正直よくわからなかったし(これまで社債周りの業務に関与したことがないことが大きい)、残りの手続き回りも正直細かくて、改正の意味はよくわからなかった。

 

雑駁だけど、自分の備忘のためにメモしておく。