事例に学ぶ建物明渡事件入門―権利実現の思考と実務 (事例に学ぶシリーズ) / 松浦 裕介 (著)

 事務所にあって,目を通してみたので感想をメモ*1

 

 

このシリーズは,複数名の先生方の共著の場合と単著の場合があって,本書は後者のケース。良くも悪くも著者の個性が出やすくなっている。建明をして,居住者の退去を求める側でこの種の事案に関わられた経験の多い先生の手によるもの。それゆえ,どうしても退去を求める側よりに見えてしまう記載もあったが,その辺りはあまり気にしすぎないのが良さそうに感じた。

 

総論的な解説のあとに,如何にもありそうないくつかのシナリオについて,受任から最後までの様子が語られ,適宜解説が挟まれる形。文章が読みやすいので,見た目ほど読むのに時間はかからなかった。事件がどういう形で推移していき,その都度何をすべきか,ということを学ぶ上ではこの形が良いのだろう。

 

お金周りの周辺知識の必要性,予測可能性の低さ,という辺りがこの種の事案として語られているのが印象的だった。いずれについても,解説を見ると,なるほどというところではあるのだが。

*1:この種の本ばかりというのはいいのかとも思うのだが,他方で,1年目なので,こういう本を読んでおくことで,突然案件が来ても対応しやすくすることには一定の意味があるので,まあ可能な限り目を通しておくことにしている