気になっていたけど,読んでなかった本を読んでみた。
個人的には末井さんというと,リアルタイムでは知らないものの,アラーキー師らと写真時代をやっていた編集者という立ち位置で認識していた。なかなか個性的な人生を送られているようで,自伝的エッセイは映画にもなっている。母親がダイナマイト自殺をしたというあたりからして衝撃的過ぎる。
そんな著者が,自殺に関してのエッセイというか,ルポルタージュのようなものを連載してそれが単行本化されたのが本書。ご本人は自殺を考えたことはないようだけど,周囲で自殺やそれに類することがあったこともあって,こういう連載を始めたとのこと。
末井さん自身が,平凡とは程遠い人生を送られていて,自身の話だけでも興味深いのだけど*1,そういう人が,自殺について,いろいろな人に話を聴いたり,樹海に行ったりしていて,その他の内容も興味深い。声高に自殺を阻止しようとはせず,淡々と取材をしている感じで,文章も読みやすく,するっと読めてしまう。
声高に何かをいうという感じでもなく,淡々と,ただ側にいて,話を聴いてくれる,という感じの文体が,重い話になりがちな内容を扱いながらも,胃もたれする感じの読後感にならないようにしているのが良い。
自殺する人は真面目で優しい人です。真面目だから考え込んでしまって,深い悩みにはまり込んでしまうのです。感性が鋭くて,それゆえに生きづらいひとです。生きづらいから世の中から身を引くという謙虚な人です。そういう人が少なくなっていくと,厚かましい人ばかりが残ってしまいます。
本当は,生きづらさを感じている人こそ,社会にとって必要な人です。そういう人たちが感じている生きづらさの要因が少しづつ取り除かれていけば,社会はよくなります。取り除かれないにしても,生きづらさを感じている人同士が,その悩みを共有するだけでも生きていく力が得られます。だから,生きづらさを感じている人こそ死なないでほしいのです。
この本が広く読まれて*2,自殺について考える契機になれば良いと思う。