最初の一歩?

恥ずかしながら,まったくフォローしてなかったけど,弁護士ドットコムのニュースで気づいた。

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世間的には,課徴金の減免率を調査協力の度合いに応じて変える*1という方が関心があるのだろうし,それはそれで妥当なところではあるのだが,個人的には秘匿特権の方に関心がある。

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日本以外の国,特にアメリカでも独禁法違反が問われるようなときには,秘匿特権が日本でないがゆえに,日本での情報開示によりかの国で秘匿特権の放棄と扱われるような事態が生じるのではないかと,懸念していたのだけど*2,一定の範囲で対応がなされたものと評価できるのだろう。

 

この点に関し,公取がまとめたものはこちら。これしか読んでないけど(汗),気になった点をいくつかメモ。不勉強ですいません。

 

まず,気になるのは,対象がえらく狭いところ。不当な取引制限(独占禁止法第3条後段)に係る違反事件に関する行政調査手続に限られ,犯則調査は対象外だし,私的独占とか不公正な取引方法も対象外。わかりやすいところから,ということなのだろうか。

 

次に,適用対象となる「弁護士」の範囲。原則外部弁護士で,インハウスは独立性が保たれていることが条件のように見えるけど,外部の弁護士だって,会社から活動の対価を受けている点はインハウスと同様であって,この差異にどういう意味があるのかは,僕にはよくわからない。確か欧州とかはこういう感じの整理をしていたとおぼろげながら記憶しているので,まったく不合理とまではいえないのだろう。今は,企業の外にいる身なので,そういう立場からすれば歓迎すべきなのかもしれないが,その区分けにどこまでの意味があるのかは個人的には疑問が残る。

 

この2点がまず気になったし,他にも気になる点はあるのだけど,その辺りはできれば議論の資料も見てみたいところ。

 

いずれにしても,一度導入が見送られたものが入った事自体は,上記の懸念との関係では歓迎すべきことなのだろう。そして,適用範囲が狭すぎるのではないかという懸念については,今後,運用実績の蓄積の中で拡大に期待すべきなのだろう。その意味で,日弁連が「一歩前進」と評しているのは,妥当なものなのではないかと思う。

 

 

 

*1:ある意味では課徴金額を裁量性にしたという見方も可能なのだろうか…

*2:そういう実例が見られないという話が某報告書で出ていたと記憶しているけど,そういう実例って,そもそも外部からの観測にかかるのだろうかという素朴な疑問を感じるところ。