事例に学ぶ成年後見入門―権利擁護の思考と実務 (事例に学ぶシリーズ) / 大澤 美穂子 (著)

アラフィフとかになると相続とかと同様にいつどこから話が飛んで来てもおかしくない分野ということで,後見周りの本も読もうということからこの一冊。

この「事例に学ぶ」シリーズは債務整理編に続いて目を通したのだけど,典型的な事例を使っての解説がわかりやすいという印象。事例部分もさることながら解説も読みやすく,読むのに手間取らないのが良い。一通りさっと目を通すことで,この分野の大まかな鳥瞰図が頭に入るという感じになって,先行きに一定のイメージを持つことができるようになるのは助かる。

 

典型的な事例だけではひねった事例に直ちに対応できるわけではないにしても,典型事例への対応が頭にあれば,ひねった事例についても考えることも比較的容易になるのではなかろうか。そういう意味で典型的事例についての解説を読みやすい形で提示してくれているのは良い。

 

個人的には,典型的事例(+αもあるが)の解説である第2篇以上に重要と感じたのは,総論的な第1篇。対応の視点や関連知識の解説は重要という気がした。後者については,法律家だけでは対応しきれないところもあるので,他の専門職との共同作業が必要になるところ,そういう方々と共同作業の前提となる,最低限の知識や,存在する種々の制度の解説は,最初の時点で頭に入れておくべきと思うので,コンパクトな解説が有るのは有用。

 

事例とかを読むと,あまりドロドロした形には書かれていないが,こじれたときには相当大変なことになるんだろうなというのが容易に想像できる。正直積極的に関わりたいとは言いづらい分野では有るが,どうなることやら…。

 

最後に2点ほど気になった点をあげると,まず,昨今の相続法改正前の本という点。そのうち改訂がなされるものと思うが,早期に改訂版が出るのを期待したい。

次に,入門書については,常に期待するところだけど,この本の先に紐解くべき本の案内があるとさらに良かったと思う。まあ,東京家裁判事の方々の本とかなのだろうけど,それでも一応言及があったほうが良いと思うところ。