業務委託契約について考えてみる。

何を考えているのか不明ですが…(謎)*1

毎度お馴染み(?)無双様の次の呟きを見て,エントリを書くかと思い至った。とはいえ,エントリになるまでに相当時間があいた。色々考えるのに時間がかかったのだった。こういうエントリはどうしてもある程度時間がかかるので*2

 

業務委託契約と題される契約類型は,「業務」の内容次第でいろんな内容を含めることができるので,幅が広くなる可能性がある。その場合,「業務」自体に馴染みと言うか土地勘めいたものが働かないと,内容を審査する,またはその内容を契約書にまとめ上げる,にしても,どこからどう考えたら良いのかということからわからないということになりかねない。

 

このお悩みに対しては,上記の無双様のように,そもそもどういうビジネスをしようとしているのか,を把握し,その把握した内容に基づきリスクを検討すればいい,というお答えがあり得る。おっしゃるとおり,ご説ごもっとも,なんだけど,それをどうやるのか,それ自体が問題なので,実はお悩みの方にとっては,「そう言われても…」ということになるような気がする。まあ,先のご託宣はそういう意味ではお悩みに対する解決策としては不十分と言われても仕方がないのかもしれない。

 

そこでどうするかを考える。僕自身なら,どうするか。基本的なところは,先般の2つのエントリで書いたようなところから考えることになる。次の2つのエントリが総論であれば,各論的な検討になろうか。

dtk.doorblog.jp

dtk1970.hatenablog.com

 

要するに上記の2つを前提に,業務委託契約について考えてみようかと思い至ったわけだ(前置きが長過ぎる…)。僕であれば,ざっくりいうと次のようなステップで物を考えることになるのではないかと思う。抽象的に考えてみただけなので,抜け漏れ誤解があるかもしれない。お気づきの向きは適宜の手段でお知らせいただければありがたい。

 

1.自社がこの契約によって何を得たいのか,何を達成したいのかを把握する。

 この契約単体,及び,この契約の後の将来,の2つのレベルで,何を実現したいのか,質的・量的な意味でいかなる利益を得たいのか,そのために何をどこまで提供する(危険の負担も含めて)用意があるのか,という辺りを抑えることになろうかと。業界内での自社の立ち位置や事業戦略などの背景事情も把握しておきたいところ。いずれにしても以下の検討の前提となるところ。結論として,自社が提供可能な範囲内で,必要な結果が得られるのであれば,契約を締結しても悪くはなさそうということになるのだろう。

 また,業務委託が,最終的なゴールを実現させるための一つのステップとしてなされる場合もあり,その場合には,この契約に基づく短期的なゴールに加えて,最終的なゴールに至るまでの全体像を頭に入れておく方が良いことも多いと思う。全体像の中で,このステップでは何が達成されていないといけないのか,という制約要因(時間的なもの,量的なもの,質的なもの,も含め)を把握しておくことが望ましいのであろう。

 

2.出てくる自社以外の当事者を確認し,役割分担,それぞれの当事者にとってのこの契約を締結するメリットを確認する。

 当事者の素性(下請法との関係では,資本金とかも),自社との関係(必要に応じて反社チェックも入るのだろうし,今までの取引履歴,トラブルの履歴もおさえられると良いのだろう),それぞれの役割分担,すなわち,具体的な役割及びそれにより得られるもの,それとそれぞれの当事者がこのスキームでいかなるメリットを得るのか,を抑える。加えて,自社にとって,夫々の他の当事者について,能力及びこのスキームにおいて当事者でいることのメリットは何か,という辺りもおさえられるとよいと思う。その当事者が何らかの理由で組んだスキームから離脱するようなケースにどのように備えるかも変わってくるだろうから。

 なお,当事者については,交渉に出てくる当事者と,実際に契約に基づき義務を負担する当事者と同じでない場合とかもあるので,注意が必要(交渉は親会社がするけど,実際の負担は子会社,みたいなケース)。

 

3.情報,モノ,金の流れとその順序を確認する。

 上記で確認した,短期的,長期的な獲得目標を自社が達成するために,何をどうしなければならないのか,手順を確認する。システム開発のようなケースで設計を業務委託で行う場合に、仕様書などをこの段階で確定させて、次の開発の実作業につなげるような形を想定するとわかりやすいのかもしれない。その過程では,各段階ごとに,自社がなすべきことが,自社の能力などに照らして,実現可能な範囲に収まっているか(多少が頑張ってなんとかするというところまで視野に入れて,だろうけど),時間軸,能力(自社の要員の能力や、設備などのキャパシティも含め)の面などから確認することになるのだろう。 その過程で何がどうクリティカルパスになっているかまで抑えられるとリスクの所在がわかりやすくなるのだろう。自社の義務を果たすために,他の当事者の行動などが必要な場合,そういうものが適時になされるといえるかどうかの評価,及び,それが得られない場合の代替手段の有無,並びに,損害が生じた場合に取りうる対応ということも検討できると良いのかもしれない。

 また,上記の確認に際して,モノなどの実際の流れと契約関係との間に乖離がある場合には,双方についても把握が必要になるのは言うまでもない。

 

4.公法的な規制との関係を確認する。

 下請法等,関係する法令の適用を考えて,問題が生じないかという観点からの確認も必要になるだろう。許認可業種については,規制の適用を受ける当事者が契約に基づき自社で行うべき行為をするのに必要な許認可を受けているか,及び,適用される行為規制があるときは,契約上行うべき行為が当該規制に抵触していないかということの検討も必要だろう。日本以外の場所が絡む場合には,当該場所を管轄する国の公法的規制の適用についての確認も必要になるだろうし,域外適用のある場合にはそこも視野に入れて検討する必要があるのだろう。国をまたいでの動きがあるときは輸出管理規制(アメリカが絡むとき等、場合によっては再輸出規制とかも)の適用の検討も必要になることがあろう 。

 規制という意味では税法というか,税務の観点からのチェックも重要になろう。特に内容のはっきりしない業務委託だと,業務の存在自体も疑われるケースも有り得るから,報告書のような有体物で成果物を抑えることも必要になるかもしれない。

 

…具体的な事案なしに考えてみる*3と,僕に思いつくのはこの程度というところ。ご参考になれば幸甚。

*1:どっちかというと思いつきでやっているだけ(汗)

*2:2021/9/26:言葉足らずに思われた部分につき一部加筆した。

*3:過去に関わった諸々の事例を思い起こしながら考えては見たのだが…